第190回 『 生涯の財 』 9
- 2006/01/10(火) 15:00:00
・26年前、管理者養成学校の開校に当たり、教育のテーマを選び出した。柱の一つはマネージメントの知識教育である。ただし、コミュニケーションの理論を知っても、話しが下手な人は本人のコミュニケーションは良くならないし、部下の指導も出来ない。こうして、話す能力のアップを二つ目の柱としなくてはならなかった。
・このような例は他にはないか。管理者は質問によって部下の行動を掴む、データを作り数字を分析する…。つまり、聞く、数字を使う等、5能力が教育の対象とすべきだと知った。
・能力教育は、知識を与えるより遥かに難しい。のみならず身体に覚えさすには長い期間を必要とする。このため私達は3カ月の期間を求めた。が、忙しい管理者には無理がある。よって研修は13日間とした…。 以上が前号。
【 当校の、話す能力への取り組み 】
・もし学校教育で 「話す」 という能力教育をするなら、高校、大学の学年で行うであろう。この教育を受けていない管理者の話す能力の低さは、想定の中にあった。ところが、管理者は 『話す基礎』 そのものが出来ていなかった。小さな声、弱い声、早口、とちり等の欠陥があり、ここを徹底的に叩かなくては話す能力は育ちようがないのだ。私たちは小、中学校レベルに降りて行き、発声訓練、素読訓練により声そのものを太く、力強いものに作り変えることから始めた。
・話す能力訓練では、スピーチの論理的な組み立て方の理論を指導する。ただし研修生はこんな理論は直ぐ忘れる。従ってしっかり覚えて頂かねばならない。次は1題7分間のスピーチ実習である。まずテーマについて各自スピーチを組み立てる。覚えて話す練習をする。実習には公式審査があり、審査員の前でスピーチして頂くことになる。審査員は厳しい。小さな声、とちり等はたちまち減点され不合格となる。1題目合格すれば、さらに2題、3題のスピーチと審査が待っている。こうして13日間を修了した多くの研修生が、話す力に自信をつけて帰社されている…。
【 ABC研修方式 】
・『聞く』 教育は、20問の徹底的な論争訓練の中で相手の意見を良く聞いて、次に反論することで養成してきた。ただし聞く能力の目覚しい養成方法が発見できず、充実度は「話す」と比べ、40%くらいであった。ところが平成17年、A氏のスピーチをB氏が良く聞く、聞いて改善する 『ABC研修』 方式を開発し、充実度は2倍となった。
・「数字を応用する」 教育は5年前、1泊2日「データ分析 『35例』 数値管理」セミナーを完成させた。が、テーマの壮大さに比べ、1泊2日ではあまりに 時間が短か過ぎる。そこで、1年通学後継者コースに 「データ」を組み入れ、主テーマとした。1年あるので 「数える」 能力のオン・ザ・ジョブ教育は本格的に行なっている。
・文章を 「書く」 教育は報告書作成で一応指導をしてはいるが、時間の制約があり、無いに等しい。本を 「読む」 教育は13日間合宿では無理なので、最初からやっていない。つまり、5能力のうち当校で責任を持って指導しているのは、 『話す』 と 『聞く』 能力のみである。また、数字を 「扱う」 能力は後継者コースのみである。
【 管理者が失敗する本当の原因 】
・研修を通じて分かってきたことは、管理者は5能力に欠陥を抱え、しかもその深刻さを認識していない事である。企業トップは、管理者が運営に失敗する原因をマネージメントの知識や経験の不足にあると捉えている。そして管理者を1日か2日のセミナーに派遣してマネージメントの知識を勉強させるが、成果は得られない。なぜなら知る事と出来る事は違うのだ。知った事を出来るようにするには訓練を必要とする。5能力の訓練こそマネージメントを成立させる土台である。話す事と聞く事の出来る人は行動力を身につける。そして行動力は生涯の財の一つであろう。
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