第199回 『 決断の難しさ 』

  • 2006/05/16(火) 15:00:00

・部門には日々問題が発生する。部門のリーダーの下には部下や他部門、お客様や業者から様々な問題が持ち込まれる。その数は一日20件前後、月に2〜3件は難しい問題が発生する。問題の対処には人の判断と決断を必要とする。問題を解決することはリーダーの大切な任務である。彼はこれらの問題を受け、「判断」し 「決断」 しなければならない。リーダーの判断力、決断力が低いと、部門にもたらすマイナスは大きい。

【 判断の壁 】
・判断とは正しいものを選ぶ事である。目の前に四つの分岐点があれば、どの道を進むのが正しいかを判断しなければならない。この為にはリーダーは必要なデータを集め、問題の原因を究明し、最良の解決策を得る等、一連の思考作業を行なう。ところが多くのリーダーにとって 「判断」 は厚い壁のようだ。事実、彼らは判断を苦手とし、よく誤る。私の印象では、二つの選択肢があって、一つを正解とするならば、なぜか8割のリーダーが誤った道をわざわざ選んでしまっている。判断を誤れば責任を問われる。従って、彼らの中には判断を避けて問題を放置するか、問題の対処を始めからトップや上級上司に丸投げする者もいる。
・そもそも判断、決断は経営者にとって主要なテーマの一つである。経営者が判断を誤れば、一発で会社を倒産させかねない。彼らは多くの経験と学習を重ねることによって判断のノーハウを習得し、判断力を磨いている。つまり、判断力は教育によって学び得るものである。正しいノーハウを覚え、正しい手順を踏んで取り組めば、誰でも良い判断を得られる。ここまで出来れば決断すること自体は簡単だ。我々は5年前、2泊3日「判断・決断そして問題解決学」コースを開発したが、内容の比重は 「判断」 が9に対し、 「決断」 は1であった。

【 決断の壁 】
・リーダーは問題を解決する対策を判断したら、次に決定をする。決定する前の手続きとして、部下や関係者の意見を聞く。ただし多数決に従うのではなく、あくまでリーダー自らの責任と権限で、自分の考えで決定する。判断には煩雑な作業と論理的な思考力を要するが、決断は対策を実行に移す意思決定をするだけである。ところがこの意思決定が出来ないリーダーが少なくないのである。彼らは何となく決定をためらい、ここでストップする。いらついたトップからは叱責を受け、部下からは催促と抗議を受ける。それでようやく決める。
・リーダーが自分の判断に自信が無ければ、なかなか決断できない理由も分かる。ところが不思議なことに、良い判断を持っているのに決められずにいる例も多いのである。何かを決定することは精神的に重い仕事である。リーダーにとって 「決断」 は 「判断」 に劣らず厚い壁となっている。

・先日、テレビであるスポーツジャーナリストが、サーカーのワールドカップに臨む日本代表チームの力を、次のように分析していた。「…日本の実力は世界の強豪と比べ、パス廻しは上手い。しかし得点力が低い。いつまでもパスを廻し続け、思い切ったシュートが放てない。パス廻しとは 『根回し』 であり、シュートとは 『決定』 である。つまり、根回しに時間をかけ、決定の先送りをする日本人の習性がそのまま出ている… 」 これは日本チームの特徴を浮き彫りにする穿った論理だと思った。事実、日本には中村俊輔選手や中田英寿選手のように、フィールドの中央でパスを自在に操る名ミッドフィルダーはいるが、攻撃的なドリブルで敵の厚い壁を突破して、ゴールシュートを放てる名フォワードはなかなか輩出しないようだ。
・この論理はそのまま我々ビジネスの世界にも当て嵌まる。日本人には何事も「話し合い」と「全会一致」を旨としてきた歴史的背景があり、日本人は「決断」という一人で行う孤独な作業が苦手である。

この記事に対するトラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事に対するコメント

この記事にコメントする

管理者にだけ表示を許可する
 にほんブログ村 経営ブログへ