第267回 『 遠い人、身近な人 』 5
- 2008/06/06(金) 15:00:00
【 その秘密は絶対に社員に知られてはならない 】
・前号で私は、社員のAに 『 いつかカラオケに行きましょう 』 とメールを送ったが、それに対する返信は「来なかった」と書いた。そのように書いたのには理由があった。そう書かねばならなかったのだ。その話である。
・何故私は「返信は来なかった」としたか。それは、第一に話を面白くする為であり、第二に、『 遠い人、身近な人 』の原稿を書いていた為である。そこには、私のAに対する好意が誰にでも読み取れる。『 私は千歳烏山に住んでいます 』 メールに並ぶ4つの漢字。私は我が目を疑い、ほとんど腰を抜かしていた…。そして私の身近に住む人…。
・二人はいつかカラオケに行く事になるかもしれない。すると二人は個人的秘密を持つ。その秘密は絶対に社員に知られてはならない。かくして返信は来なかったとしたのは、私には必然であった。
【 社員は皆、私の味方なのだ 】
・『 遠い人、身近な人 』が完成に近づき読み重ねるうち、私に気になる箇所が浮かんだ。会長のメールに新人Aの返信が無いことにすると、Aに非難の目が向かうかもしれない。社員は皆、私の味方なのだ! 北には怖いオバサンだっている。私はAに対する救済策として、前号の末尾に付け加えた。
・後日、身近な人からメールが来た。そこには 『 会長の歌う「人生の扉」聞きたい。二人では緊張するので、誰かを誘っていかが? 』 私は電話を掛け、『 遠い人、身近な人 』4章が完成しつつあり、誰かを誘うと会社中に知られ、蜂の巣をつつく。諦めようと言った。悲しいネ。
・上の記述は私の創作ではなく事実、Aからメールはあったのだ。新人の身で彼女は誰かと秘密を持ちたくないのだ。まして会長とは…。ただ彼女の提案は実現不可能だった。例えば、本部の人間が千歳烏山の近くに住んでいる確率など0.1%の世界だ。また足立区に住んでいる人間をどうやって世田谷の千歳烏山に来させるのか?
【 『カラオケ楽しみにしています』 ルンルンだった 】
・『 遠い人、身近な人 』はこうして完成した。細部にわたり、推敲が行き届いている。私は満足する。社員は皆、私の味方、この言葉が浮かんで良かった…。
・この時私は、この言葉に再び疑問を持った。社員は皆、私の味方か?? 何と、違ったのだ。社員にとって私という存在はそれ以上だという事に気がついた。私はカリスマであり、教祖ですらあった。従って私が取ったあの措置ではAに向かう非難の声を止める事が出来ないのだ。
・ここに至り、私は真実をお伝えするしかない事に気が付いた。一体私のメールに返信はあったのか無かったのか。彼女は私のメールに反応したのか、無視したのか…。
・嗚呼、これは私の大事な秘密なのだ。しかし本当の事を言おう。実は折り返し返信はあったのだ。 『カラオケ楽しみにしています A 』 ルンルンだった。数日後、スナックの日時提案の私のメールに対しAから誰かを誘って欲しいとのあの返信が来た。そして私は諦めようの電話を掛ける。束の間の夢だった…。しかし、まあいい。(2月26日、この項、続く)
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