第278回 『 叱り屋ホリデー 』7
- 2008/08/22(金) 15:00:00
・この会話の核となるのは、Aが課長に仕事が終わった報告をしていない事で
ある。Aは、何故報告をしなかったのだろう。意図的なのか、それともうっか
りしたのであろうか…。
【 意図的 】
・二人の人間関係が既に悪くなっているなら、Aが意図的に報告をしない事は
十分にあり得る。課長を喜ばせるか、不愉快にさせるかの選択肢があれば、A
は不愉快にさせる道を選ぶ。…Aは選んだのだ。課長を不愉快にさせる道を !!
・課長が不愉快になるという結果は、実は二つの事を証明している。一つは、
Aが意図的に報告をしていない事の証である。もう一つは、報告すべき立場に
ある事を、Aがよく承知しているという事である。
【 うっかり 】
・Aはうっかり報告を忘れたのかもしれない。終了報告は、ビジネスマンであ
れば当然の事と承知している。が、うっかり忘れるのはよくある事であろう…。
・ただ、ここで注目すべきは、Aが課長に謝っていないという事である。謝罪
するどころか、「知りたきゃ、聞けばいいのに」、「隠していた訳じゃない」
と非常識な主張をしている。
・とすると、Aはビジネスマンとしての常識に欠けているのであろう。…いや、
そうではない。課長に反発するあまり、非常識な考えを持ち出しているのであ
る。
・一般に報告そのものは重視されているが、仕事の終了報告は行われない事が
多い。これを求める上司も、実はあまりいないのである。ただ時折、終了報告
がない為に時間の無駄や不具合が生まれる事がある。人間関係が出来ているな
ら謝罪すれば簡単に済むし、人間関係が悪くても同じようにすれば済む…。た
だ、関係が悪化していると小さな問題でも部下の反発を招く。
【 希薄なコミュニケーション 】
・課長とAとの報告を巡る「微妙なやり取り」から考えられる事として第一に、
人間関係が既に悪く意図的に報告をしないケースを見てきた。第二に、うっか
り報告を忘れたのだが、人間関係の悪さで謝罪せずに更に関係を悪化させるケ
ースを見た。この他に、第三のケースが考えられる。悪意を持たない、あの言
葉のやり取りそのままのケースである。
・現代では物は豊富で兄弟は少なく、子は自ら求めずとも与えられて育つ。数
十年を遡れば物は不足で兄弟は多く、何かを手に入れるには積極的に主張し、
しかもそれを工夫せねばならない。すると自然に話す技術が進歩する。
・豊かな時代は、説明、主張、説得の必要性が減った。黙っていても必要なも
のは与えられ、話が半分でも察してもらえるのである。この為、話す技術が進
歩しない。そういう若者が増えている。若者だけでなく、そういう社会人
も…。あの会話がその典型である。人間関係は良いとも悪いとも言えない。
…希薄なのだ。
・現代は話す技術が培われていないから、スムーズな会話が出来ない。妙に遠
慮する心理が働き、相手から話しかけられるのを待っている。そして、相手の
反応を窺っているのだろう。それは日本人の民族的特性である遠慮する、恥じ
らう性格と重なる…。その結果、言葉半分の話し方が更に助長されるのであ
る。
・希薄なコミュニケーションしか持ち得ない人たちは、悪意はないが全てに報
告をしない人種になる。この為に、時間を無駄にする等の不具合を随所に起こ
す。それが重なると、担当出来る仕事は広がるどころか社会的に限定されてい
く。当然そこでの収入も限定的になる。しっかしりしたコミュニケーション能
力の必要性がここにある。(4月30日、この項、続く)
※ 次回のメールマガジンの配信は、8月29日です。
『 叱り屋ホリデー 』は全12章の連載です。
第277回 『 叱り屋ホリデー 』6
- 2008/08/15(金) 15:00:00
【 その小さな問題を大きくしないよう気を遣っている 】
・この二人の人間関係というものは、いったいどのようなものなのであろう。
二人は良好な関係だろうか。何かしらの問題が二人の間に存在するのであろう
か。
・二人は、「その小さな問題を大きくしないよう気を遣っている」と前章の事
例記述の中にある。この記述が二人の人間関係について書かれている唯一の手
掛かりである。従って、ここに書かれた表現をもとに厳密に解釈を進めてみた
い。
【 人間関係を作っていくべく努力を行っている 】
・その小さな問題を大きくしないよう気を遣っている、という表現から考えら
れるのは、どのような事であろう。この気を遣うという表現は、二人は相手の
心や感情のぶれに神経を遣っている状態が窺える。自分を悪く思われたくない、
良く思われたいとの意識があるのであろう。また、小さな問題を大きくしたく
ないと思うのは、関係が悪化するのを避けたいという思いがある程度心に強く
働いているのであろう。
・これまで見てきたように、二人の人間関係についてまとめると次の4つの事
が言える。第一に、二人は人間関係に決して無神経ではなく、共に大切にして
いると考えられる。第二に、二人の間の関係を悪化させるような言動は互いに
極力避けている。第三に、二人は人間関係を良きものにし、それを保ちたいと
考えている。第四に、人間関係を作っていくべく努力を行っているのであろう。
【 微妙なやり取り 】
・以上の考察を正しいとすれば、二人は特別に人間関係に問題はないと考えら
れる。ただ、この二人の会話を思い起こすと、そこには「微妙なやり取り」が
あるように感じられなくはない。複雑な心理とそれが醸し出す人間関係が読み
取れるように思われる。
・二人の人間関係を考える手掛かりは、事例の記述の中に一つしかないと先に
述べた。が、二人の会話の中に読み取れる「微妙なやり取り」という状態が、
二人の人間関係を読み解くもう一つの鍵となろう。
・ここから読み取れる事は、三つある。第一に、二人の人間関係は既に悪くな
っているのではないか。第二に、言葉半分の関係である。第三に、二人の間に
はそもそも人間関係が無いのではないかという事である。ここで、この二人の
会話に働いている心理を考えてみたい。
【 人間関係は既に悪くなっている 】
『 A君、今、社用車戻った。キーだ。いつでも使えるよ 』 『 あ、ハイ 』
『 ところで、あの仕事どうなった? 』
『 もう、…終わってますよ。(知らないんですか?) 』
『 エ、いつ?(何だって !! ) 』
『 一時間位前ですか…。(知りたきゃ、聞けばいいのに) 』
『 そう、…知らなかったネ。(ダメだね、言わなくちゃ) 』
『 …別に。(隠していた訳じゃない) 』
『 じゃあ、この仕事をやって。(本当なら一時間前に頼めたのに…) 』
『 納品に行く予定ですが?…車で。(これからやる仕事があるのにな) 』
『 こっちが優先。終わったら行って。(急ぐんだよ、こっちが !! ) 』
『 …ハイ。(こっちは、そんな事情知りませんよ…) 』
・二人の会話には、上司に反発する部下の本心が隠れている可能性がある。し
かも可能性は高いのだ。もし本心がこのようなものなら、二人の人間関係は既
に悪くなっていると考えられる。では人間関係が悪いなら、二人のもとでは何
が起こるであろうか。(4月26日、この項、続く)
※ 次回のメールマガジンの配信は、8月22日です。
『 叱り屋ホリデー 』は全12章の連載です。
第276回 『 叱り屋ホリデー 』5
- 2008/08/08(金) 15:00:00
【 マイナスの大中小 】
・社員は自己を管理する能力に恵まれているなら、いずれの仕事においても多
くのプラスを生み出していた。営業にとってそれは最も重要な能力であり、製
造においても数々のプラスを生んでいく…。
・逆に、週1回、5分遅刻の自己管理能力に欠ける部下。それは仕事にどのよ
うなマイナスをもたらすかは、職種によって違いがある事が分かった。例えば
営業ではそれは致命的なマイナスになり、製造ではそのマイナスは小さくてす
み、事務の仕事では中程度のマイナスとなろう。
・従ってリーダーは仕事によって部下の指導を変えねばならない。自己管理能
力に欠けるなら、営業は30分前主義が決定的に重要であり、事務はそれに準
ずる。よって、営業の管理者は30分前主義を徹底すべきであり、ここで妥協
してはならない。事務の管理者もそれに準ずる。製造の管理者も30分前主義
を指導すべきだが、これを無理に行う事は避けるべきであろう。
【 問題を起こす部下 】
・部下の中には、教えられなくとも正しく仕事をこなす部下がいれば、始めは
間違っていても、自らの学習によって正しい仕事を覚える部下がいる。その彼
らの数は、たぶん2割前後いるだろう。反対側には、よく問題を起こす部下、
時々問題を起こす部下がいる。報告をしない。指示通りの仕事をしない。遅刻
をする。時間のかけ過ぎ…。こちら側も2割程度であろう。残りの6割はその
中間にいて、浮いたり沈んだり、時にミスを犯して叱られていると、2章で述
べた。
・この問題を起こす2割の部下と中間にいる6割の部下をいかに注意、叱責し
て、使える存在にしていけばよいであろうか。
・上司が部下に言う。
『 A君、今、社用車戻った。キーだ。いつでも使えるよ 』 『 あ、ハイ 』
『 ところで、あの仕事どうなった? 』 『 もう、…終わってますよ 』
『 エ、いつ? 』 『 1時間位前ですか… 』
『 そう、…知らなかったネ 』 『 …別に 』
『 じゃあ、この仕事をやって 』 『 納品に行く予定ですが?…車で 』
『 こっちが優先。終わったら行って 』 『 …ハイ 』
・これは、ある職場での課長と社員Aの会話である。仕事を巡って、日常のあ
りふれたやり取りである。ただ、よく読むと会話の中に小さな問題が含まれて
いるようだ。
・課長と部下のAは、その小さな問題を大きくしないよう気を遣っている気配
である。小さな問題とはAが報告をせず、課長はAの状況を知らなかった事であ
る。そして、時間の無駄が生まれ仕事に少しマイナスになっているらしい事で
ある。
・この小さな問題を少し掘り下げて考えてみたい。すると、課長とAのこの小
さな事例が、何かを語ってくれるかもしれない。(4月21日、この項、続く)
※ 次回のメールマガジンの配信は、8月15日です。
『 叱り屋ホリデー 』は全12章の連載です。
第275回 『 叱り屋ホリデー 』4
- 2008/08/01(金) 15:00:00
【 土台 】
・週1回、5分の遅刻をする者を上司が黙認する。遅刻をする彼が営業職の場
合、様々な問題が浮き彫りとなった。自己管理能力が欠落すれば、それだけで
営業の仕事は崩れていく。
・言い換えると、営業という仕事にはやるべき仕事があり、それは本人の自由
裁量に任されている。やるべき仕事は、たいてい辛い仕事である。自由裁量だ
から彼はやらない事もあり、この方が多いであろう。やらなくとも上司から咎
められる事は少ないであろう。その代わり、彼はこの報いをきちんと受け、ツ
ケを支払わされる事になる。営業の数字という…。つまり営業という仕事は、
自己管理能力が土台として成り立つのである。
【 ボロを出す事なく無難に 】
・では、彼が製造職の場合なら問題はどうなるであろうか。月4回、合計20
分の遅刻をし、遅刻でない日には始業間際に駆け込む製造担当…。
・製造では物を作る工程は定まっており、1日に作る量がほぼ決まっている。
ベルトコンベアーで一定のスピードの仕事なら、この男が5分遅れて駆け込ん
でも何とかお茶を濁す事が出来るであろう。数人でチームを組む、組み立ての
仕事なら仲間の視線があり、彼はボロを出す事なく無難にこなして行くかもし
れない。
・一方、始業30分前に出社する製造担当…。彼は、昨日作った製品の品質の
チェックが出来る。工具の点検や、今日使用する材料に不備がないかを確認す
るであろう。不良品が出やすい工程について、技術課の担当と意見を交わす。
覚えの悪い新人に、細やかに指導をしている。
・このように30分前に出社する彼は、現場の隠れた所で計り知れない貢献を
しているのである。こういう人を「人材」と呼ぶ。そして、「人材」はいずれ
然るべき地位に登る。
【 近道 】
・彼の仕事が製造であれ営業であれ、自己管理能力は自分にも人々にもプラス
に働いている。よって上司が部下の遅刻を黙認するのは、部下にとっても会社
にとってもマイナスを生んでいく。自己管理能力は、その男が会社に出て来る
時間をみればすぐ分かる。この能力が乏しければ、始業ギリギリに出社する。
この能力が備わっていれば、余裕を持って出社する。自己管理能力を養うには、
上司は部下を30分早く出社するように指導するのが近道となろう。これが習
慣となれば、本人にとってこの上ない財産となる。
【 差 】
・が、製造の現場では営業における差ほどは、仕事の成果に差はつかない…。
何故なら製造は、やるべき仕事がほぼ定まっており、それを時間内でこなして
いく。つまり、製造という仕事は勤務時間が土台として成り立っているのであ
る。営業のように自己管理能力の欠落が仕事をガタガタに崩してしまう事は起
こり難いからである。
・営業、製造のそれぞれの職種において、週1回、5分遅刻をする自己管理能
力が欠落している者について考察した。
・では、彼の仕事が事務の場合はどのようなマイナスを生むであろうか。
【 腹の膨れたファイル 】
・彼の仕事ぶりはどうであろうか。まず、彼の机の上は、書類でごった返して
いる。彼の机の引き出しを開ければ、腹の膨れたファイルが詰め込まれている。
その8割は要らないものであるが、彼は捨てない…。この為、必要な書類が見
つからず、絶えず探す事になる。書類の提出期限を忘れている。彼のメモは汚
い字で省略が多く、読み取れない。
・30分前に出社する事務員は必要書類を分かり易くファイリングしている。
不要になったデータをファイルからこまめに取り除いて捨てている。出来上が
った書類にミスがないかを焦らずに確認している。上司への報告をマメに行っ
ている。在庫の少なくなっている事務用品にいち早く気付いて注文をしている。
・書類が整理されていなければ、探すのに不必要な時間を費やしてしまう。事
務職は、その作業をスムーズに素早くこなせるかどうかは、自己管理能力に依
る所が大きいのである。(4月15日、この項、続く)
『 指導力の源泉 』―考える技術―
財部一朗
●メルマガ読者の声
・「メルマガを読んで、考える習慣がつきました」
・「タイトルごとに内容が全く違うので驚かされます」
・「先月より玄米食を始めたが続ける自信がなかった。しかし、メルマガを読
んで勇気が出てきました」 (理想の食事6/2007年7月配信)
・「学校の様子が手にとるようにわかりました」 (日本で最も潰れやすい会社
/2007年11月〜2008年2月配信)
※ 次回のメールマガジンの配信は、8月8日です。
『 叱り屋ホリデー 』は全12章の連載です。
- HOME |



