第270回 『 遠い人、身近な人 』 8
- 2008/06/27(金) 15:00:00
・前号である。この日私は秘策を持っていた。私は尋ねる。『 面白かったですか…? 』 彼女は微笑んで『 ええ、面白かったです… 』 私は半ば勝ったのだ。『 良かった。それじゃ1と2も読んで下さい 』 メルマガ2章を手渡すと、彼女は礼を言って私に背を向けた。
【 そのCDがただ者ではない… 】
・このタイミングで、私は秘策をぶっつけた。『 アア、そうそう… 』 彼女は何事かと振り向いた。『 私、最近、名曲を一曲発見したんです。凄い曲です。数日中に手に入りますから、CDを一枚差し上げます 』
・『カラオケの文化』は名曲について書かれている。自然な流れだった。彼女は微笑んで礼を言った。『 楽しみに待ってて下さい… 』 勝った!
・完全だ…。私は正々堂々とCDを贈ることができるのだ。しかもそのCDがただ者ではない…。
・そのCDとは言うまでもなく竹内まりやの『人生の扉』。この曲が小百合の心を揺さぶるだろう。そんな曲を発見した私という人間のセンスの良さに魅かれる! アア「…魅かれるかもしれない」位かナ? イヤ、魅かれないかナ…。
・まだあるぞ。『人生の扉』について書いた私のメルマガがある。買い物ではマゴマゴしているが、筆の運びはキビキビしているはずだ。もう一つ、あのメルマガの後半には例のくだらない話がある。彼女は私を軽蔑するだろうが、メルマガの続きは読みたいはずだ…。
【 どうか、思い留まって頂きたい… 】
・『 ハ…? ところで、小百合に対するあんたの目的は一体何か。それを言え…? ですか。こう見えたって、一応私は独身なんですがネ…。いえ、冗談冗談。吉永小百合再来の人と結婚はできない。小百合と、一度スナックに行きたいだけ。…イヤ、ときどき 』
・私が今、怖れていることがある。養成学校の講師たちがバスを一台チャーターして、山を降りて「くすりの成城芦花公園南口店」に視察にやって来るのではあるまいか。それは暴挙と言うべきである。どうか、思い留まって頂きたい…。
【 私の意識はどこに向かうのだろう 】
・ところで、近く新人が入って来る。一人か二人の女性…。何、思ってか、部長は美人ばかり採用している。私の草稿入力は、新人に対して抜群の教育効果がある。これから、誰が担当するのだろう。Aは書き手だから、私の草稿は打てない。
・新人が入って来て「身近な人」がAから別の女性に替わったら、私の意識はどこに向かうのだろう。Aは私の意識が別に向かうのを、望んでいるのか、いないのか。99%は別に向かうのを望んでいると思うが、望んでいない確率だって1%はある。ここに期待を繋ぐしかない。それが希望というものだ。とにかく一刻も早くこの環境から抜け出したい。
【 敗戦処理… 】
・今、櫻の隠れた名所『善福寺川』の原稿をAが書く。名曲『古都逍遥』。都はるみの祈るような櫻への讃歌と絶唱、書き手の魂を揺すらずにおかない。Aはこの曲を聞くべきだし、そのカセットは私の手にある。
・…スナックを諦めて私は深手を負っている。が、ドラマは終わらさねばならぬ。この日、杖をついて役員会に臨む。敗戦処理…、本部に立寄りAに手渡す。『 コレ、…古都逍遥 』 スナックで私が歌うはずだった…。
・メールに始まり、ドラマは事実上メールで終わった。『 終わり 』のメールは、今もケイタイに在る。以下…。
『 カセットを贈ることになろうとは。…悲しいネ、貝谷。 』
・『 私は千歳烏山に住んでいます。A 』 このメールから始まったドラマが今終わり、古いドラマという名称に変わる…。
・役員会でAの入れたお茶を他の役員と共に飲む。今の所、あたかもAに失恋したが如くだ…。(2月28日、この項、終了)
※次回、『遠い人、身近な人』後記。
翌週からは『叱り屋ホリデー』(リーダーは部下をいかに叱るか)です。
第269回 『 遠い人、身近な人 』 7
- 2008/06/20(金) 15:00:00
【 メルマガをポケットに入れて来た 】
・私は原稿を書くのに、外国製のボールペンを使っている。外国製替え芯は一本千円。1ヵ月に1本は使い切る。近所には売っていないので、新宿の京王百貨店に買いに行く。ペンにこだわるとは、私も物書きの一人らしい…。
・いつだったかこのボールペン売場に来た時、2時間の待ち時間が出来た。『 家に帰るには、半端な時間だなァ 』と私が漏らすと、店員が『 どちらにお住まいですか? 』 と尋ねて来た。『 芦花公園です… 』 と答えたら、何と『 私もそちらに住んでいます 』。住まいを尋ね、自分の住む場所も明かす女性は少ない。
・帰り際に 『 あなたも芦花公園ですか? 』 と尋ねたら、『 仙川です 』。あッ、2つ先だ。私がメルマガを書いている事を伝え 『 読んでみますか? 』と聞いたら、『 読みたい 』。 こんな人とはお近づきになりたい。以降、時々メルマガを届けている。動くCDプレーヤーをぶら下げて、今日もメルマガをポケットに入れて来た。
・そういえば、もう一人私がメルマガを渡した人がいた…。
【 くすりの成城芦花公園南口店 】
・「くすりの成城芦花公園南口店」に新人の薬剤師が入店してきた。若き日の吉永小百合の再来だ。白く美しい顔と清楚な白い制服。赤いリボンのネームカード…。ひっつめた髪。そして吸い込まれそうな笑顔! Hさん。お近づきになれないか。私はチャンスを狙う。10ヵ月経って、ついにチャンスが来た。
・無器用な私は買物では常にマゴつく。カードを使うのを必ず忘れる。『 カードをお持ちでは 』 と聞かれ、ポケットからこいつがなかなか出てくれない。買った物をカウンターに忘れる。その度に彼女は優しく微笑む。二人は親しくはないが、知らない仲ではない。
・私には武器がある。それを懐に科白をチェックし、出掛ける。そして、店頭に山積みされたトイレットペーパーを取ると彼女に声をかける…。
・『 すいません。これを 』 私は、398円のトイレットペーパーを差し出す。『 ハイ…、ありがとうございます 』と、彼女。
・『 あなた、薬科大でしょ 』 『 ハイ、そうです 』
・『 4年の時に、やっぱり塾に行ったんだ 』 『 私は塾へは行ってません 』
・『 ええッ、それで国家試験に合格したんだ。凄い 』 『 ア、いえ、勉強ができた訳では… 』
【 この日私は秘策を持っていた 】
・いよいよだ。ここで私は7人の薬科大生が私のファンになった事。その経緯をメルマガに書いた事、これを読んでみませんかと 『 カラオケの文化 』3章を薦めた…。すると、彼女は素直にそれを受け取ってくれた。万歳! こうして第一ラウンド、私は勝利した…。
・第二ラウンドは翌日だった。私はHさんが整理していた整髪棚のヘアークリームの一つを、彼女に相談して買うことにした。それからさりげなく尋ねた。『 メルマガ、読みました…? 』『 ハイ、読みました 』
・この日私は秘策を持っていた。私は尋ねる『 面白かったですか…? 』 彼女は微笑んで『ええ、面白かったです… 』 私は半ば勝ったのだ。『 良かった。それじゃ1と2も読んで下さい 』 メルマガ2章を手渡すと、彼女は礼を言って私に背を向けた。(2月27日、この項、続く)
追記
・先号で『 ブログに私の顔写真を載せました 』とお知らせしました。写真を載せるのも執筆者の務め、もしくはサービス精神です。末尾に『 Aもこの事を学んでもらいたいものと思っています 』と書きました。その原稿を入力していたAが『 サービス精神以前に、私が住んでいる場所が千歳烏山と記述しているので、個人情報上心配なのでイヤなんです 』とクレームをつけてきました。この時、私は『 私の文章だからこのままでいい 』一蹴しました。
・その後、私はサービス精神とは何かを考えているうち、その片鱗を掴みます。そして夜、Aに電話で尋ねました。『 徳川家康、織田信長、豊臣秀吉。この3人の中でサービス精神が一番旺盛なのは誰だと思う? 』。Aは、『 えー、家康ですか… 』。知らないんです。『 違うネ。信長だと思うヨ。理由は自分で考えてみて。メルマガのいいテーマになりそうだ 』私はAに伝えました。このテーマの配信は来春になります。それまでに信長の理由、皆さんもお考え下さい。(6月13日)
第268回 『 遠い人、身近な人 』 6
- 2008/06/13(金) 15:00:00
【 意識は常にAに向かう不思議 】
・Aが入社して3ヵ月。ここ1ヵ月は、人手不足からAとの仕事上のやり取りが増え、今では電話で一日に十数回も話している。それに加え、住まいが近いという驚くべき事実も発覚し、急速に親密感を覚えた。それは、Aにとっても同じであるに違いない。(財部、注:ここの4行の記述はAのもので、彼女側の本心かも…)
・私には20代から30代の女性の友達が3人いる。いずれも個性的で魅力的な人たちだ。それに比べ、Aは月に1回の役員会でチラリと見るだけだから…、はっきり言って印象は薄い。それなのに…、意識は常にAに向かう不思議。…3人にではなく。
・そういえば、Aは20代だろうと前々号で書いたが、私は25、6歳だろうと思っていた。それが、最近になって29歳ということが判明した。29と30は紙一重。私はきわどく当たり籤を引いていた。
【 朝から晩まで 】
・私との関係をこれ以上深めるのはマズイ気もするが、仕事だからそんな事は言っていられない。Aはいよいよ原稿を書き始めた。入社して3ヵ月、私の草稿の入力作業をほとんど専門でやった。かつてはスタッフだったが、今では協同執筆者になっている。力量不足で、元のスタッフに戻ってくれればいいのだが。以下、理由である…。
・協同執筆作業を続けるとはどういう事か。展開のプロットを話し合う。書き手は彼女だ。欠点を指摘し、書き直しを求める。「結論を急ぎすぎるゾ」「文章が説明的で面白くないンダ」「文章にスピードが無い」。 欠点が良くなれば誉める。
・こんな事を朝から晩まで毎日二人で続けていたら、情が深まるばかりだ…。この先どうなっちゃうんだろう、…71歳のこの私に勝目は無く、ひどい目に遭いそうだ。
【 …とにかく、草臥れた 】
・今日、メルマガを持って馴染みの寿司屋に行き、その話をした。こんな所にもメルマガファンがいる。『 メールを送ってどこに住んでいますかって聞いたら、私は千歳烏山に住んでいます、ときたよ 』 『 へ〜エ! 偶然だ 』 原稿の具合はどうかと聞かれたが、私は『 …とにかく、草臥れた 』と答えた。原稿を待つというのは…。
【 …何と、音が出るではないか!! 】
・家に帰ってもやる事がない。竹内まりやの「人生の扉」が聴きたい。食卓の上のCDプレーヤーについ目が行く。チェッ、2日前に動かなくなっていた。まりやを聞くには動くしかない。恰好の暇つぶしを兼ねて新宿の店に修理に持ち込んだ。
・まずカセットだ。音が出る…。まあいいさ、そっちは動かそうとしてないから。問題はCDなんだ。店員がCDを入れる。…何と、音が出るではないか !!店員はあくまで、にこやかだ。私は呆然とする。またやらかした、この機械音痴 !! (2月27日、この項、続く)
お知らせ
・私は2ヵ月半前から自宅勤務をやめて、会社に出向いて仕事をしています。先週、ブログに私の顔写真を載せました。スタッフAの写真を載せようと勧めていたらAに断られ、逆に『会長の写真を載せましょう』と言われてしまい…。
・私は顔写真を掲載するのはなるべく避けるようにしています…。何故なら、私は写真写りが良くない。とは、言い訳で本体が良くないので掲載するのはイヤなんです。
・ところが、どんな人間がメルマガを書いているのか読者の方は執筆者の顔を知りたいと考えるでしょう。従って、写真を載せるのも執筆者の務め、もしくはサービス精神と思った次第です。そこで初めは10数年前の少しましなものを載せようとしました。が、よく考えるとメルマガに度々現在の私の年齢、71歳と公表した上で様々な事を書いております。
・すると昔の写真では、71歳の意味がなくなってしまう…。そこで、Aに即席で写真を撮ってもらい、今現在の私の写真を載せました。
・物書きにサービス精神は必要です。Aもこの事を学んでもらいたいものと思っています。(6月12日)
第267回 『 遠い人、身近な人 』 5
- 2008/06/06(金) 15:00:00
【 その秘密は絶対に社員に知られてはならない 】
・前号で私は、社員のAに 『 いつかカラオケに行きましょう 』 とメールを送ったが、それに対する返信は「来なかった」と書いた。そのように書いたのには理由があった。そう書かねばならなかったのだ。その話である。
・何故私は「返信は来なかった」としたか。それは、第一に話を面白くする為であり、第二に、『 遠い人、身近な人 』の原稿を書いていた為である。そこには、私のAに対する好意が誰にでも読み取れる。『 私は千歳烏山に住んでいます 』 メールに並ぶ4つの漢字。私は我が目を疑い、ほとんど腰を抜かしていた…。そして私の身近に住む人…。
・二人はいつかカラオケに行く事になるかもしれない。すると二人は個人的秘密を持つ。その秘密は絶対に社員に知られてはならない。かくして返信は来なかったとしたのは、私には必然であった。
【 社員は皆、私の味方なのだ 】
・『 遠い人、身近な人 』が完成に近づき読み重ねるうち、私に気になる箇所が浮かんだ。会長のメールに新人Aの返信が無いことにすると、Aに非難の目が向かうかもしれない。社員は皆、私の味方なのだ! 北には怖いオバサンだっている。私はAに対する救済策として、前号の末尾に付け加えた。
・後日、身近な人からメールが来た。そこには 『 会長の歌う「人生の扉」聞きたい。二人では緊張するので、誰かを誘っていかが? 』 私は電話を掛け、『 遠い人、身近な人 』4章が完成しつつあり、誰かを誘うと会社中に知られ、蜂の巣をつつく。諦めようと言った。悲しいネ。
・上の記述は私の創作ではなく事実、Aからメールはあったのだ。新人の身で彼女は誰かと秘密を持ちたくないのだ。まして会長とは…。ただ彼女の提案は実現不可能だった。例えば、本部の人間が千歳烏山の近くに住んでいる確率など0.1%の世界だ。また足立区に住んでいる人間をどうやって世田谷の千歳烏山に来させるのか?
【 『カラオケ楽しみにしています』 ルンルンだった 】
・『 遠い人、身近な人 』はこうして完成した。細部にわたり、推敲が行き届いている。私は満足する。社員は皆、私の味方、この言葉が浮かんで良かった…。
・この時私は、この言葉に再び疑問を持った。社員は皆、私の味方か?? 何と、違ったのだ。社員にとって私という存在はそれ以上だという事に気がついた。私はカリスマであり、教祖ですらあった。従って私が取ったあの措置ではAに向かう非難の声を止める事が出来ないのだ。
・ここに至り、私は真実をお伝えするしかない事に気が付いた。一体私のメールに返信はあったのか無かったのか。彼女は私のメールに反応したのか、無視したのか…。
・嗚呼、これは私の大事な秘密なのだ。しかし本当の事を言おう。実は折り返し返信はあったのだ。 『カラオケ楽しみにしています A 』 ルンルンだった。数日後、スナックの日時提案の私のメールに対しAから誰かを誘って欲しいとのあの返信が来た。そして私は諦めようの電話を掛ける。束の間の夢だった…。しかし、まあいい。(2月26日、この項、続く)
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