第266回 『 遠い人、身近な人 』 4
- 2008/05/31(土) 15:01:03
【 そこに並ぶ4つの漢字に我が目を疑い、ほとんど腰を抜かした 】
・するとしばらくして食卓の上でケイタイにブーという微動が来た。届いて読めて返事かも…。私はワクワクしてケイタイを開く…。
『 返信遅くなり、すみません。私は千歳烏山に住んでいます。A 』
そこに並ぶ4つの漢字に私は我が目を疑い、ほとんど腰を抜かしていた…。
・私が住む京王線の駅の一つ先。かつて私も住み、チビが生んだ4匹の仔犬とチビを連れて、駅前の広場に座り込んだ。ダンボールに仔犬を入れて…。中小企業の社長にとって、こんな事など何でもない。4匹の仔犬に子供たちは洒落た名を付けたが、私は単に色によって四郎、九郎、ベージュ、ムラサキシキブとし、これが通り名となった。20年前のネーミングがこんな所で活きた。
【 私と次男でチビを連れて甲州街道を歩いた 】
・何人もの人が寄って来た。中にはチビを貰えるのかと聞く人がいた。紀州犬の雑種の成犬なのに、何を考えているんだろう。ムラサキシキブが1時間位で売れた。成城学園に住む人に連れられて。夕方、家に帰ると隣家から手が上がって、四郎が貰われた。私が駅前で座り込んでると聞いて焦ったらしい。
・およそ20年前、日野市から世田谷に引越した時、私と中学生の次男とでチビを連れ、2時間かけて甲州街道を歩いた。50歳の春3月…。子供たちはチビに夢中だったが、そのチビもある夜塀を乗り越えて脱走した。千歳烏山、アア、忘れ得ぬ懐かしの町。その千歳烏山には、今は15分の速歩で毎日昼食を食べに行く。行きつけのスナックのある町。…私はほとんど運命を感じた。
・私は再びケイタイを取り、1時間をかけてようやく次のメールを送信した。幸いエラーのメールは来る事無く…。
『 おエーッ、驚きました。いつかカラオケに行きましょう 貝や 』
【 ここまで皆を引っ張って。ご勘弁は無いだろう 】
・ケイタイのビギナーである私は、出来るだけ短い言葉を選んでいた。それがぶしつけな言葉で住まいを聞き、ぶしつけな言葉で誘う結果になってしまった。今思うと酒の勢いがあった。「返事は」。その話はここまでで…。これ以上の記述はどうぞご勘弁頂きたい。私にだって名誉も面子もある。
『 ハ…?ここまで皆を引っ張って。ご勘弁は無いだろう…ですか 』
・仰る通りだ。お話しします。私が第二のメールを送ったのは、夜10時半近くだった。彼女は嫌だったのだろう。夜、遅かったからかも知れない。実は返事のメールは来なかった。翌朝、一番で私は身近な人にメールした。
『 カラオケの事、忘れて下さい。すみません。貝谷 』
・入社3ヶ月の新人と会長。セクハラまがいと朝になって気がついたら腰がくだけた。もう少し別の言葉で礼儀正しく誘っていたら、別の結果があったかも知れない。まあ、自業自得と言うべきであろう。こうして強運で引き当てた1%の確率の当たり籤が儚く消えた。
【 この人とは住居まで身近だったんだ 】
・今私はあることに気がついた。私は何故、身近な人にメールを送信できたのだろう。ケイタイを開いてみたら彼女の欄にケイタイの電話とメールアドレスがあった。だいたいメールなどほとんど送る事はない。そしてあのアドレスは私には登録不能だ。ケイタイ電話位ならなんとかやれるが…。そしてこの二つを私は彼女に聞いた記憶がない。一体どうなっているんだろう。
・この原稿を読んだ部長のTから夜、電話があった。『 会長がケイタイ練習の為、Aさんが電話で教えてましたよ 』翌朝、身近な人Aからも同じ趣旨のファックスが来た。『 フーン 』 私は絶句する。もう皆さんと、あまり長くはお付き合い出来そうにない。
・それにしてもこの人とは住居まで身近だったんだ。私は思っている。やっぱり運命かなァ…。
・『 ハ…? おエーッ、の「お」はどういう意味、…ですか? これ、取れないんです。貝やの「や」ですか。…谷が出なくて、トホホ 』(2月22日、この項、終了)
・後日身近な人からメールが来た。そこには 『 会長の歌う「人生の扉」聞きたい。二人では緊張するので、誰かを誘っていかが? 』 私は電話を掛け、「遠い人、身近な人」4章が完成しつつあり、誰かを誘うと会社中に知られ、蜂の巣をつつく。諦めようと言った。悲しいネ。
第265回 『 遠い人、身近な人 』 3
- 2008/05/20(火) 15:00:00
【 6人の役員と、彼女が出すお茶を飲むだけだ 】8章より…。
・身近身近と言ったって本当は彼女は遠い存在である。私は自宅が仕事場なので、会うのは1ヵ月に1回だけ。役員会の日に本部でチラリと…。そして会議室で6人の役員と、彼女が出すお茶を飲むだけだ。また役員に、お年玉みたいなもの、あげようかナ。
・電話は一日に1、2回、あるかないかだ。『 清書、まだできない…? 』こんなの、電話のうちに入るのかナ。しかし昨日は、電話でヒットを放った。『 ファックス、いかないんだけど。…そっち沢山使っているの? 』 ヒットは次のセリフだ。 『 このいかないって言葉ネ。あんまり使いたくないんだけどネ… 』アア、生き甲斐を感じる…。このようにAは私には遠い人なのだ。
・但し、書くという孤独な作業では、私は常に誰かを意識している。または意識することがある。ファックスの先に確実に居て草稿を待つ人はその対象になってしまう。…やっぱり身近な人なんだ。向こうは兎に角、この私には。しかし向こうも事情は私と同じはずだ…。
【 それにしても人生は難しいナ… 】8章より…。
・幹部の一人から私に、会長の性に関する草稿を清書するAの今の仕事は微妙なものがあり、彼女にとって苦痛なのでは、という意見が寄せられた。そうかもしれない。しかし今の作業の全てか一部をなくすことの方が、もしかしたら彼女には苦痛になるかもしれない。私としてはしばらくこのまま続けるしかないと考えている。それにしても人生は難しいナ…。
・こちらの動きを察した身近の人Aからファックスが来て、この仕事の担当をはずさないで欲しいと言って来た。一番最初にメルマガを読める贅沢と書いた彼女は常にメルマガの傍にいたいのだ。やっぱり私の判断が正しかったようだ。
・こちらの動きを察した身近の人、と恰好をつけたが、動きを察するも何も、この草稿はAが打っているんだ…。
・7章と8章は大幅に書き変えた。こっちも悪くないけど、古いあっちは傑作だったなァ…。
【 東京23区はあまりに広く 】
・身近な人が何かの時電話で、「黒い花びら」を聞いているような事を言っていた。これが頭にあったのかもしれない。読者のお一人が彼女の歳を聞いておられた。彼女は20代である事は間違いなく、それが、20であろうと、29であろうと、71歳の私には同じ事だ。知りたい事はただ一つ、彼女がどこに住んでいるか…。
・もう夜スナックに行く事もなくなったが、彼女が近くに住んでいれば一度は二人で行ってみたい。しかし東京23区はあまりに広く、おまけに神奈川があり、千葉、埼玉がある。彼女が近くに住んでいる確率は1%も無い…。
・ある夜、私はケイタイを開き、身近な人にメールを送った。メールはどうせ行きはしないさという気安さも手伝って…。仮に行っても読めはしないさ。『 あなたはどこに住んでいますか 貝谷 』
【 そこに並ぶ4つの漢字に我が目を疑い、ほとんど腰を抜かした 】
・するとしばらくして食卓の上でケイタイにブーという微動が来た。届いて読めて返事かも…。私はワクワクしてケイタイを開く…。そこに並ぶ4つの漢字に私は我が目を疑い、ほとんど腰を抜かしていた…。(2月18日、この項、続く)
第264回 『 遠い人、身近な人 』 2
- 2008/05/09(金) 15:00:00
【 個人情報がゾロゾロ出て行きそうだ。嫌だなァ… 】2章より…。
・会長と社長とはその指示命令関係はどうなっているのか微妙だ。ただ、メルマガに関しては私は担当という立場にある。そこで社長の意向は指示として受け、書けても書けなくてもやってみようと考えた。
・以上の理由でこの種のテーマ、もう少しだけ続きます。メルマガ読むのをお止めにならず我慢下さい、暫くの間。しかし、私の個人情報がまたゾロゾロ出て行きそうだ。嫌だなァ…。
・『 ハ…? 遠慮なくずっと続けろ、ですって。…怒られますよ。私が 』
【 メルマガを一番最初に読める贅沢 】2章より…。
・Aさんはパソコンの為私の汚い字を読み解き、私の
『 メルマガを一番最初に読める贅沢 』と表現した女性。
『 ハ…? 美人か? ですと 』 『 もちろん! 』
『 ブログに写真を 』ですか。『 本人に聞いて、OKならそのように 』
『 いくつか? 』ですか。『 私も知りませんよ。本人に聞いて下さい 』
・この頃、身近な人と私の間はトラブッていた。7章と8章で私は彼女について書いたが、その内容についてであった。その夜、私は決断をして彼女にEメールを送った。翌朝、ファックスが届いた。昨夜、メールを貰った事、意味がほとんど分からない。アア、私のメールはその半分は届かないが、意味が分からないなんてあるのだろうか。しかも私は物書きだというのに。
・やむなく私は電話を掛ける。『 7章と8章は全面的に書き直します。あなたがいいって言うまでね 』 完成されたこの章のそれぞれ6割を、これで失う事になる。しかも反対の主張で書かねばならない。苦心惨憺して二つはようやく完成した。8章の末尾で、私は読者に次の告白を記した。
【 どこかで一杯やりましょう。兵隊勘定で… 】7章より…。
・メルマガを6年間、書いてきた。その中でこの章は最も難しい章だったかもしれない。できるだけ事実を、できるだけ分かりやすくが私の執筆の心得だった。今回、この心得に反することをやった。つまり、できるだけ読者に気づかれぬように…。もちろん事情があった。私のメルマガ歴6年の実績らしきものに免じて、悪しからず…、お許し下さい。
・ただし、事実は正確に記述しているので、私が隠したものを読み取る人が居るかもしれない。その方は本社研究開発部に私宛に葉書きを下さい。正解の方とはどこかで一杯やりましょう。兵隊勘定で…。
【 最も難しい章にしてしまって、ゴメンナサイ… 】7章より…。
・この時、身近な人から短い電話があった。電話を切ろうとしたら、彼女が小さく言った。『 最も難しい章にしてしまって、ゴメンナサイ… 』
『 いいんだ。僕が悪かったんだ。あなたが謝ることは無い 』 嗚呼、人生は難しい。
・『 ハ…? わざと難しくしておいて、楽しんでいるのじゃないの…、ですと?鋭い! 恐れ入りました 』 嗚呼、人生は楽しい。(2月16日、この項、続く)
第263回 『 遠い人、身近な人 』 1
- 2008/05/01(木) 15:00:00
・私のメルマガの読者の多くは経営者、管理者、ビジネスマンである。従ってそこで扱うテーマは部門経営及び、それに必要なリーダーシップが中心にある。しかしこの種のテーマに限らず広くリーダー達の生活全般、例えば健康管理についても取り上げた。この他、飲酒、喫煙、食事、糖尿病、はては詩の解釈まで…。
【 自分が教育者だという事を自覚しつつ… 】
・今年、1月、私が取り上げたテーマは性であった。私にとって、以上の流れからもそれは必然であった。リーダー達にとっても、それはゆるがせに出来ないテーマである。私は初めに3章を書き、次に再説として14章を得た。内容は「私、財部一朗のヰタ・セクスアリス」注1)であった。
・17章、ここには性に関する大事な情報がいくつかあり、この情報を必要とする人は少なくないはずだ。また性への真面目な取り組みであった。私としては多くの人に喜ばれる自信があった。私は淡々とかつ簡潔に筆を進めたつもりだ。自分が教育者だという事を自覚しつつ…。しかし、事実を明確にという私の性格は変えられない。17章は読む人によっては露骨と映ったようだった。
【 眉をひそめる方々の、41年間の信頼を裏切る 】
・そして、社内に配信反対の声が起こった。ここに至って私は立ち止まらざるを得ない。多くの人は喜ばれるはずだが、何割かの人は眉をひそめるかも知れない。メルマガの読者は大部分がユーザーでもある。そして当社が性を扱う事は期待されていない。性も教育の対象とするのは少し強弁のように思える。すると私は眉をひそめる方々の、41年間の信頼を裏切る事になる。
・作者としては残念だが、ある日決断を下し、17章はお蔵入りとした。前作、『 日本で最も潰れやすい会社 』は一部の人からお褒めの言葉を頂いた。…過分に。17章はそれ以上に傑作だったのだが…。ユーモアも随所に入った。この17章はもし扱うとすれば、全く別の組織でやるしかない…。いずれ、お蔵の中からあの17章を取り出して、この私のこの世の最後の仕事として世に出してやるさ。…必ず !!
・ともあれ、その中で無難な一部を抜粋したい。
【 あのメルマガ繰り返し読んじゃうよ 】2章より…。
・この種のテーマをいつまで書くつもりか、というお声が聞こえそうだ。いや、私もそう思う。だから早く止める。ただこれを書くにはこんな理由があった。
・1月末の当社の役員会で私はこんな挨拶をした。『 昨年は赤字決算必至の状勢にありましたが、逆転黒字となりました。皆さんのご努力に感謝します。そこで今日は皆さんにお年玉を用意致しました 』するとここで『 おう 』という声が上がった。
・私は部屋の隅に待機していた事務員に声をかける。『 ではAさん、皆さんに例の物をお配りして 』 『 ハイ 』 お年玉は 『 知識は力なり、第二弾 』の3本のメルマガだった。その夜の新年会で、おうと声を上げた役員は10万円かな、20万円かなと考えたという。少し気の毒をした。
【 あれネ、材料出尽しなんだ。書けないと思うヨ 】2章より…。
・翌日、メルマガを読んだ社長から早速電話があった。『 読んだよ。いいねぇ、面白い 』 『 あれ、やっぱりお年玉だろ 』 『 そう、お年玉 』夕方、社長から再び電話 『 あのメルマガ、繰り返し読んじゃうよ。続き、もっと書いてくれないかな 』
・『 う〜ん 』 私はうなる。私も考えていたのだ。『 あれネ、材料出尽しなんだ。書けないと思うヨ 』 これで社長は諦めてくれた。(2月18日、この項、続く)
注1)「ヰタ・セクスアリス」森鴎外著 明治42年(1909年)発表
・題名はラテン語で「vita sexualis」で「性生活」を意味する。哲学者金井湛なる人物の性の歴史を描いた作品。6歳の時に見た絵草紙に始まり、悩み多き青年期を経ていく性的体験について哲学的視点から捉える内容。当初発禁処分を受けた。
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