第228回 『 意思決定と役員会 』 4

  • 2007/05/10(木) 15:00:00

・役員会では遠慮のない意見が交わされた。主観と主観のぶつかり合い、時に激論が交わされ、怒声が飛ぶこともあった。論議された内容もそこから導かれた決定も、明らかに水準を超えていた。水準は超えていたが、得られた決定がすべて良質とは言えなかった。合意を得られずに流された大事なテーマもあったし、妥協の上の中途半端な決定もあった。要するに玉石混交、会議の質の位置づけは上、中、下のうちの中。中のうちの中か上であろう。
・役員会の決定は、それによって一定の資金が投入されたり、複数の社員がその方針を実行に移す。…またはその行動を変える。その役員会決定が玉石混交ではすまされない。会社の資産を動員して効果の確率が50%というのは、考えてみれば由々しき問題と言えた。

【 今の数字が今週の数字 】
・ある日私は役員会の討論を聞いていて、テーマの現状の認識が各自バラバラであり、その数値が曖昧である事に気がついた。記憶の中のその数値も、各自の主張に基づいて歪曲されている。これでは討議の土台が脆弱で正しい結論を得るにはほど遠い。
・そこで私は提案された問題に対し、なるべく詳細なデータを取ってみた。データとは現状の数字であり、それは今日の数字、今の数字である。しかし今の数字は少し曲者である。すなわち今の数字とは今週の数字の事もあり、今月の数字、直近3ヵ月の数字、今年10ヶ月の数字という事もある。今週の数字が大切になるのは、先週何かの変化があった場合だ。

・たとえば遅刻が多いAに課長が先週注意していたとする。ところが今週の金曜日にAが遅刻し、たまたまこれを目撃した部長は課長に「君は先週、Aに注意したばかりだというのに。不真面目だね。適切な処置が必要だな…」と言ったとする。この件、部長は如何に判断しいかなる処置をとるべきだろうか。

【 ここまでやれば完璧だ 】
・物事を判断し、何かを決める時、人は情報を集めるだろう。たとえば課長はAにほんとに注意をしたか。どのような注意だったか。これに対し、Aは何と言ったのか。金曜日のAの遅刻の原因を課長は聞いたか。とすればそれは何か? 等…。

・しっかりした部長は以上の事を課長にきちんと聞く。もっとしっかりした部長ならAにも聞くであろう。何かを決める時は周辺の情報を集めることはリーダーの心得である。これにより判断の誤りはかなり防げる。課長だけでなくAにも聞けば完璧となろう。作業はかなりしんどいが…。
・ところがこのやり方には欠陥が内包されている。例えば課長はAに注意してなかったかもしれない。言葉巧みに、またはのらりくらりと、その事実を隠すかもしれない。課長はAに伝えたが、気が弱くてあいまいな事を言い、Aには遅刻の注意とは伝わっていないという事もある。また部長がAに尋ねてもAには課長は怖いだろうし、どこまで本当のことを言うだろうか。

・以上の事はしっかりしたリーダーが取る方法だが、それでも誤りは起こる。これらは補助的方法としては良いが単独では危険だ。これら主観的な情報よりも、現状をつかむもう一つの方法があり、この方が確実かもしれない。それが数字である。今週Aは何回遅刻したか。その回数が1回であれば、そこにはどういう意味があるのだろう。意味を教えてくれるのは過去の数字である。先週の遅刻が2回となれば、今週の遅刻の意味ははっきりしてくる。過去のデータはこれだけでなく、更に2週遡って調べたい。遅刻の回数が2回、2回、2回であれば、今週1回の遅刻は先週の課長の忠告の効果である。こんな小さな事にもデータは役に立つ。いや、データなしでは判断を誤るであろう。(この項続く)

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