第230回 『 意思決定と役員会 』 後記

  • 2007/05/30(水) 15:00:00

・先の4月20日ブログ『単なるゴミ屋敷のオヤジさん』の項において、私は整理整頓(部屋の片付け)は満点だが文書管理がまるで出来ない事を告白した。数日後、管理者の一人からファックスが来てコンピュータは情報の蓄積に適し、必要な情報を素早く取り出す文書管理にも優れているとあった。この事は私の乏しいIT知識にもあったが、知らないで赤恥をかく事のない様にとの配慮であり、ファックスは有難く頂いた。

【 勘でスピードを上げ舵を切っていた 】
・当社のデータの利用は経営者、管理者が中心であり、売上見通5日報などは社員も目を通している。当社150種のデータのうち、社員が見るデータは、80種類くらいと思うが、この意義は小さくない。例えばバブル崩壊の16年前までは当時、創業24年でありながら、当社に役に立つデータは零であった。
・それは島影の見えない大海を行く船が現在の位置も進路もスピードもおぼろげなまま、勘でスピードを上げ舵を切っているようなものだ。もちろん、1ヵ月の業績は売上も利益も月末には見当がつき、翌月には具体的な数字で示される。しかし、月末までの28、9日間は手さぐりの経営が続く。

【 成り行き任せの数字をコントロールする】
・1期1年の場合には期末に、いや10ヵ月も経てば船の航路や寄港地がしだいにはっきりするが、結果が悪くてもこの時期では手の打ちようがない。勘による経営には常に限界があり、数字の動きは成り行きに任せるしかない。しかしテーマを定めて毎月の数字を取っていく。次に昨年の月々の動きと対比する。また、累積した数値の昨年比(累昨比)という項目を付けると姿がしだいに見えてくる。

・問題の発生とその大きさがはっきりすれば、放置できないので誰でも解決に取組むだろう。それはこれまで成り行きに任せていた数字が、コントロールできるようになる事を意味する。あるいは予想外の売行きに気がつけば、市場の変化をいち早くキャッチし、その原因が分かれば新しい展開が始まるかもしれない。

・当社のデータは作られたらただちに関係者に送られるが、問題はそれをしっかり読んでいるかである。データはパソコンで送られ、多くの管理者はプリントアウトしないで画像でデータを読むだろう。この事に、しっかり読むという点では少し不安が残る。

【 150種類のデータは問題の現状だ 】
・データは月末に1回だけ作られるものもあるが、多くは月に3回、または6回送られてくる。
・またデータには業績が順調なもの安定しているものがある。こういうデータは画像で読み流しても良い。業績が悪いデータはもし急速に悪化しているなら赤信号と判断し、データをプリントアウトして悪化の原因を調べ、時には関係者とのミーティングが必要になる。
・では業績が一貫して悪いデータはどう対処するか。このテーマは多分、解決が困難であろう。過去に何度か問題に取り組んでうまくいかなかったに違いない。従って条件が整うまで時を待つ必要があり、画像で読み流す選択もある。

・150種類のデータとは150の問題の現状であり、それぞれ良くなったり悪くなったりしている。これはと思う問題は見逃すことなく受け止めたい。具体的には必ずプリントアウトして、自ら考え、また関係者との意見の交換をしておくべきだ。これによって問題は自分のものとなり、また解決策を得るスタートとなる。

第229回 『 意思決定と役員会 』 5

  • 2007/05/21(月) 14:56:00

・金曜日、遅刻の多い社員Aが遅刻するのを、たまたま部長が目撃する。先週、Aには課長が遅刻を注意したはず…。けしからんとして叱る、そういう行為はあって良い。しかし、この判断が正しいか否かはAの出勤状況のチェックが必要になり、その最も確かな方法は数字を調べる事である。…さて、調べてみると今週のAの遅刻は1回であった。
・遅刻1回が何を意味するか、これを知るには過去の数字を見ねばならない。もしも過去3週間の遅刻が2、2、2であれば、一週間に遅刻2回がAの現状となる。それが課長の注意により遅刻は1回に改善された…。従って部長は改善を理由にAを誉めても良い。もしくは遅刻はなくせるはずだと、社員Aを注意するという選択もある。数字を基に見ていけば問題の姿が浮き彫りになり、判断を誤る事はない。

【 数値が正確に現状を示す 】
・ここには更に別の問題が存在する。Aの週2回の遅刻は1ヵ月では8回の遅刻になり、課長の管理責任が問われて良い。これまでAの遅刻を見逃していたのか…。とするならその理由は…。A以外の課員の勤怠の状況も悪いのではないか…。この課長の課は他部門に比べて、社員の勤怠状況が悪いのではないか…。
・これらの疑問にはすべて数値で回答できる。疑問には数値が正確に現状を示してくれる。このように問題を発見したら数字によってその大きさを明らかにし、適切な対策が用意できる。

・社員Aの遅刻については、期間を1週間という単位でチェックした。Aの遅刻が1ヵ月2、3回であれば週単位でなく、1ヵ月という単位で過去のデータを取る必要がある。そうでなくては遅刻の現状が見えてこない為である。

【 死んだデータと生きたデータ 】
・部門経営を正しく行なうには、数字によって現状を明らかにする習慣を身につけたい。それが判断の誤りをなくす唯一の方法である。部門を預かる管理職がデータの活用をマスターすれば、この上ない武器となる。ただし、データには役に立たない物が少なくない。例えば1ヵ月に1回作成される売上実績表は、大抵の組織で広く使われている。しかしこれは過去の実績を示すもので『死んだデータ』である。これを週1回の売上実績週報にしても『死んだデータ』にかわりない。週の数字の変化が何も語ってくれないからだ。しかしこれを『売上予測』週報に切り替えれば、データはたちまち『生きたデータ』に一変する。

・当社の表の中に縦横の線は一切ない。パソコンが数字をきれいに打ち出すので、線は必要ないからだ。データは一目見て理解できる事が肝心だ。その意味でデザインが大切である。また、当社のデータにグラフや、折れ線等の図はない。必要なのは数字の動きであり、ただひたすら数字が並んでいるだけである。
・当社のデータはこの10余年で150種類に増えている。データは5日目毎に制作されるもの、10日目毎のもの、月1回のものもある。内容は商品別売上昨比表があり、資金の動きを示すデータがある。役に立たないデータは捨てられ新しいデータと入れ替わっている。

・150種類あると大抵の問題の進行状況が管理できる。当社は幸い創業以来利益を計上したが、流石にバブル崩壊の4年位は赤字が続いた。それ以降赤字から脱したが、最近、再び赤字に落ちた。そして気がついたら、当社には年間利益見通表というデータがなかった。これでは大事な利益をコントロールできない。期末に近付けば損益は大体見当はつくが、これでは一年間の手遅れである。いろいろ工夫を重ねて、新年度になって2ヵ月であっても、損益の現状とその見通しが得られるようになった。

第228回 『 意思決定と役員会 』 4

  • 2007/05/10(木) 15:00:00

・役員会では遠慮のない意見が交わされた。主観と主観のぶつかり合い、時に激論が交わされ、怒声が飛ぶこともあった。論議された内容もそこから導かれた決定も、明らかに水準を超えていた。水準は超えていたが、得られた決定がすべて良質とは言えなかった。合意を得られずに流された大事なテーマもあったし、妥協の上の中途半端な決定もあった。要するに玉石混交、会議の質の位置づけは上、中、下のうちの中。中のうちの中か上であろう。
・役員会の決定は、それによって一定の資金が投入されたり、複数の社員がその方針を実行に移す。…またはその行動を変える。その役員会決定が玉石混交ではすまされない。会社の資産を動員して効果の確率が50%というのは、考えてみれば由々しき問題と言えた。

【 今の数字が今週の数字 】
・ある日私は役員会の討論を聞いていて、テーマの現状の認識が各自バラバラであり、その数値が曖昧である事に気がついた。記憶の中のその数値も、各自の主張に基づいて歪曲されている。これでは討議の土台が脆弱で正しい結論を得るにはほど遠い。
・そこで私は提案された問題に対し、なるべく詳細なデータを取ってみた。データとは現状の数字であり、それは今日の数字、今の数字である。しかし今の数字は少し曲者である。すなわち今の数字とは今週の数字の事もあり、今月の数字、直近3ヵ月の数字、今年10ヶ月の数字という事もある。今週の数字が大切になるのは、先週何かの変化があった場合だ。

・たとえば遅刻が多いAに課長が先週注意していたとする。ところが今週の金曜日にAが遅刻し、たまたまこれを目撃した部長は課長に「君は先週、Aに注意したばかりだというのに。不真面目だね。適切な処置が必要だな…」と言ったとする。この件、部長は如何に判断しいかなる処置をとるべきだろうか。

【 ここまでやれば完璧だ 】
・物事を判断し、何かを決める時、人は情報を集めるだろう。たとえば課長はAにほんとに注意をしたか。どのような注意だったか。これに対し、Aは何と言ったのか。金曜日のAの遅刻の原因を課長は聞いたか。とすればそれは何か? 等…。

・しっかりした部長は以上の事を課長にきちんと聞く。もっとしっかりした部長ならAにも聞くであろう。何かを決める時は周辺の情報を集めることはリーダーの心得である。これにより判断の誤りはかなり防げる。課長だけでなくAにも聞けば完璧となろう。作業はかなりしんどいが…。
・ところがこのやり方には欠陥が内包されている。例えば課長はAに注意してなかったかもしれない。言葉巧みに、またはのらりくらりと、その事実を隠すかもしれない。課長はAに伝えたが、気が弱くてあいまいな事を言い、Aには遅刻の注意とは伝わっていないという事もある。また部長がAに尋ねてもAには課長は怖いだろうし、どこまで本当のことを言うだろうか。

・以上の事はしっかりしたリーダーが取る方法だが、それでも誤りは起こる。これらは補助的方法としては良いが単独では危険だ。これら主観的な情報よりも、現状をつかむもう一つの方法があり、この方が確実かもしれない。それが数字である。今週Aは何回遅刻したか。その回数が1回であれば、そこにはどういう意味があるのだろう。意味を教えてくれるのは過去の数字である。先週の遅刻が2回となれば、今週の遅刻の意味ははっきりしてくる。過去のデータはこれだけでなく、更に2週遡って調べたい。遅刻の回数が2回、2回、2回であれば、今週1回の遅刻は先週の課長の忠告の効果である。こんな小さな事にもデータは役に立つ。いや、データなしでは判断を誤るであろう。(この項続く)

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