第206回 『 詩人と音楽家 』 3
- 2006/08/22(火) 15:00:00
― 教育の種類
【 技術教育は軍隊、体育会、大学の医学部などにある 】
・教育には知識と技術の二つの教育がある。前者は高校では教壇から、大学では100人の学生を前にマイクを使う。弁護士を目指すのでなければ、知識学習に苦痛は少ない。その分、見返りも期待できない。知識の何割かは常識となって定着するが、落ちこぼれを防ぎ、社会に受け入れられるレベルにすぎない。高校大学の教育が仕事に効果的に使われることは少ない。
・技術教育は軍隊や体育会と一部の大学で行われている。大学の医学部や工学部も技術教育である。サッカーでも野球でも、技術を身につけるには繰り返しの苦しい練習と、長い時間が必要となる。コーチは各人の長所欠点に合わせた指導をする。よって技術訓練は少人数が対象となる。苦しみが伴う分、技術が上がれば見返りも大きい。進歩する喜び、ライバルに勝つ喜び。医師のようにそれが職業となる事もある。
・当校の教育も技術教育である。出来ない事を出来るようにする…。実習だから100人を前にマイクを使うことはない。当校の1クラスは僅かに14人、これを2人の講師が手分けして個々の技術を磨き上げる。
― 研修のテーマ
【 苦手とし、自ら開発できず、最も必要とされる能力が対象だ 】
・では、養成学校ではどんな技術をレベルアップの対象としているのか。ビジネスマン、管理者が苦手とし、自分で能力開発が困難なもの。そして現場で最も必要とされる能力。…話す能力、聞く能力、論理的思考、ディベートなどの基礎能力。リーダーシップとして誉める能力、注意する能力。仕事を与える能力、判断力、問題解決力…などである。
・技術教育といっても100%が実習ということはなく、野球なら15%以上は理論を教えるであろう。医学部での知識理論は50%を越えるかも…。従って医学部の理論の授業では、100人を前にマイクを使うこともある。
・当校では理論の教育時間は0%、…無いのだ。従って100%技術実習である。理論は扱うが教えない。マネージメントの理論は一つひとつ考えることによって、研修生が発見していく実習である。その発見は講師との1対14の対話によって行われる為、14人が限度であり、マイクで100人という教育風景はない。
― 教育の期間
【 軍隊、大学では4年の教育期間があるが、ビジネスは4日だ 】
・軍隊や大学には教育の時間が豊富にある。2年から6年という長さだ。高校から始めるスポーツなら、更にプラス3年がつく。ビジネス研修では、時間にこんな贅沢は許されない。与えられる時間はせいぜい3、4日間、ふつうは2日間程度である。当然、ビジネス研修は知識教育しかない。
・4年という長期でも、効果が知れている知識教育が、3日や4日で効果があるはずがない。このため社員教育に手をつけていないトップもたくさんいる。むろん、研修はしないよりする方がずっといい。社員を研修に出すトップには、効果に疑問があり不満を持つ人も少なくない。しかし、これ以外に方法がないのも事実なのだ…。
・組織は人を得て伸び、人がいなければ縮む。これは1800年前の三国志、蜀の劉備玄徳と魏の曹操が人材を求めて争った時代からの一貫したテーマだ。それは現代も同じ。手塩にかけてトップが人を育てるのでは、時代のスピードに追いつかない。1000人の会社でも50人の会社でも、人を得、人を育てることが経営を左右する。トップはこれを知っているので研修を続ける。彼らトップの熱い思いにいかに応えるかが我々のテーマだった。昭和54年、養成学校は以上の背景から生まれた。(この項続く)
第205回 『 詩人と音楽家 』 2
- 2006/08/08(火) 15:00:00
【 詩人と音楽家が創った学校に、しごきやいじめはない 】
・永冨氏が上級訓練に入校したのは平成15年11月であった。また、財部は現在 (平成18年 5月当時) ダニエル・ピンク著、大前研一訳の『ハイ・コンセプト』 ― 新しいことを考え出す人の時代 ― という本を読んでいる。ダニエル・ピンク氏はアメリカの上流中堅層の弁護士、会計士、コンピューター技術者の貧困層への転落が始まっていると衝撃的証言をしている。年収1000万円から140万円へ…。
・あり得ない。なぜそんな事が起こりうるのか。ピンク氏によると彼らの仕事が海外へアウトソーシングされている…。海外の何処へ? 氏の答えは恐怖そのもの…だ。そして万人を黙らせる。インド、中国、フィリピン、ロシア…。ここには年収50万円、100万円で喜んで仕事をする、知的労働者が量産されつつある。大前氏はアメリカ国内では100ドル前後のコンピューターのソフトが弁護士や会計士の仕事を奪いつつあるという。また、ダニエル・ピンク氏は彼らは主に左脳を使って仕事をする人とし、アメリカ社会での彼らの没落を予測し、今後は右脳を使う人の時代になると予想している。
・右脳を使う人…。右脳を使うのは何屋さん? それが、詩人、音楽家、コピーライター、デザイナーだという。…とすると右脳が新しいことを生み出しているんだ。昔も今も…。
・中村俊輔は3年前に右脳の時代の到来と学校の本質を喝破したかの如くだが、これは偶然にすぎない。ピンク説を紹介した理由は、トップが詩人や音楽家であることは別に恥ずかしいことではないと、氏が証言してくれた為だ。そして我々が言いたいことは、学校への偏見と誤解を解きたいということだ。詩人と音楽家が創った学校には、断じてしごきやいじめはない。
【 70年にわたる壮絶なドラマを、ドラッカーの頭脳は掴んでいた 】
・大前研一氏によれば 「Knowledge−Worker 知的労働者」という言葉を作ったのはピーター・ドラッカー氏だという。そのドラッカー氏は第二次大戦で軍隊教育の技法が進歩し、教育戦争が戦われたことを正確に認識していた。財部は最近、それを氏の著作に発見した。(ネクスト・ソサイエティ 240p 訳 上田惇生 2002年刊 ダイヤモンド社)のみならずドラッカー氏はこの技法が、最近、効果的に使われたと証言している。
・1989年のベルリンの壁、ソビエト連邦の崩壊により東西冷戦は終わった。東側諸国の何億の人々が、なだれを打って自由経済市場に参入してきた。しかし、発展途上国で作られる製品は、その国の教育水準が高まらない限り、先進国には通用しない宿命がある。そして教育水準が上がるには数十年という時間がかかる。案の定、作られたのは粗悪品であった。ところがある時期を境に、品質がどんどん良くなっていく…。 そこには何があったのか?
・ドラッカー氏は、その秘密は第二次大戦の新兵教育の技法が、ここで活用されたことにあるという。エッ! それは忘れられたのではなかったか!? そう…。しかしドラッカー氏は2005年、96歳にして逝去され質問はできない。また氏の記述は、ドラマティックな証言にしては簡略に過ぎた。よって以下は財部の解説である。
・日本で大戦に動員された800万人の市民が、新兵教育の功罪を身をもって体験した。敗戦により彼等は職場に戻るが、軍隊と教育の全てを否定し忌まわしき記憶として葬った。しかし新兵教育の驚くべき効果は、形を変えて我が国の民間にも僅かに生き残った。なぜ? 何処に? 素人の、大量の人に、短期に、一定の技術を与えねばならぬ部門…、があった。すなわち大企業の製造現場の一隅に、教育技術は活用されていたのだ。
・この生き残った技法が再び脚光を浴びる日が来る。中国で世界で粗悪品が作られる中、あの技法が動員され、数億の人々に活用されていたのだ。そして思いもかけぬ奇蹟を起こした、…のを氏は読み取っていたのであろう。
・この70年にわたる壮絶なドラマを、ドラッカー氏はいかなる頭脳で掴んでいたのか。それにしても何という炯眼!!(この項続く)
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