第181回 『 考える癖、選択の幅 』 5
- 2005/08/30(火) 15:00:00
・部下に支配されている部門、その指揮権を取り戻せ! このため管理者はどうすべきか。方法の第一は、部門経営の鉄則をメンバーに徹底せよ、とした。では鉄則とは…? 企業は常に競争にさらされていて、例外はない。トヨタもソニーも我々も。仕事のやり方を変えよ、古いやり方を捨てよ、であった。
・第二の方法はトップの方針、意義を管理者がよく理解、納得することである。このためには、データを作り分析し、部門の現状と問題点をつかみ、問題の原因を明らかにし、トップの改善策を検証する必要がある…。以上が前号で述べた結論であった。
【 部門経営の鉄則をメンバーに徹底する 】
・鉄則を部下に徹底する、と言えば多くの管理者はうなずくであろう。「それはそうだ。当然だヨ」賛成を頂いて有難いが、はたして 「当然」 であろうか。ある日管理者が、部下にトップの新しい方針を伝えるとする。この時彼らは、たいてい身を固くしてこれを聞く。そして管理者自身はどう考えているかを探る…。 彼がトップに賛成していると知ると彼らは思う。 「こんな案を受けるなんてどうかしている。…課長はイエスマンだからな」押し黙っていても部下は心の中で反発している。それに気付いて管理者はおじけづき、スゴスゴと引き下がるのだ。
・管理者はなぜ失敗するか。その前に、彼は何故トップの方針を受け入れるのか。部下が言うようにイエスマンだからか。そういう人もいるであろう。しかし多くの管理者は正しいものとして受け入れているのだ。すると奇妙な事が起こる。新方針に対し管理者は受け入れ、社員は反発する。何故こんな事が起こるのか。意識レベルが一方は高く他は低いためか…。 違う!
【 部下の反発は無理もない 】
・原因ははっきりしている。管理者はトップから 「鉄則」 について何十回も説明を受けてきたはずだ。変えよ、という部門経営の鉄則はトップと管理者間では 「徹底」 されていた。だから課長はトップの方針を理解し、受け入れた…と考えるべきであろう。
・では課長と部下との間はどんな状況だったか。トップがしたように部下に鉄則を説明していたか。やり方を変えなければいけないと、何十回も話していたか。 …残念ながら限りなくゼロであろう。「根回し」 がないところに、いきなりトップの方針が伝えられる…。「何ダ! ソレハ」 部下の反発は無理もない。課長は失敗すべくして失敗したのだ。
・大事なことを部下に徹底することは (誰もがやっている) 当然のこと、などではない。それはとても難しいことらしい。何故か…?これは日本人の国民性に根ざしていると思う。日本人は自分の考えを述べたり主張する事が少ない。本心を話すこともあまりない。当たり障りのない話題は良いが、込み入った事は人間関係を悪くするとして避けている。リーダーとなると、その弊害は大きくなる。言わなくても分かってくれるだろうと、管理者は黙っている。話されない事は部下に分かるはずがない。話さないから、説明が下手になる。彼らが鉄則を徹底して話すなど、思いも寄らない事であろう。
【 方針に対する理解を深める 】
・トップの方針が示されたら、管理者はデータを作り分析し、改善策を検証する必要があると述べた。新方針はトップの勘をもとに作成される。メンバーは作業のやり方を切り換え、新技術、新習慣を習得せねばならぬ。この為新方式はできるだけ正しいものを選択すべきだ。それを可能にするのはデータ分析であり、部門長は事前に、また事後も分析を続けねばならない。これによって部門長は方針の欠陥に気付き修正する事もあろう。あるいは方針の正しさが実証できるなら、部門長は大きな自信を得るであろう。(この項、続く)
第180回 『 考える癖、選択の幅 』 4
- 2005/08/16(火) 15:00:00
・会社は数十、時に数百の部門によって成る。その部門は誰によって支配されているか。トップ、管理者、部下という三者のうち、いずれの考えで部門は経営されているか。私は部門は部下の意見によって動いているとした。つまり、部門の支配者は 「部下」 なのである。心ならずも、管理者は支配者として部下を選んでしまうのだ。「トップ」「管理者」が部門を支配していると言えるのは共に全体の1割程度でしかない…。 以上が前号で下した結論であった。
【 部門の指揮権を取り戻すために 】
・以上の状況は経営にとって重大な問題を提起する。なぜなら部門は効率を高めねばならぬ宿命にあるが、部下の考えで経営をして効率が高まるはずがないからだ。このような事態にトップや管理者は手を拱いているわけではない。そこには常に暗黙の闘いが行なわれている。当然、トップや管理者の意が通り勝利することもある。しかし、一つの改善に馬鹿馬鹿しいほどの時間とエネルギーを掛けねばならない。
・ここにおいて管理者には次の難題が残される。すなわち管理者はいかにして部門の指揮権を取り戻すか…。その方法があるとすれば、それは何か。方法の一つは部門経営の鉄則について三者の共通認識を確立し、これを部門に徹底することである。では、部門経営の鉄則とは何か。
【 山里の漬物業も 】
・そもそも企業は常に競合他社との競争にさらされていて、例外はない。トヨタもソニーも町工場も山里の漬物業も。競争に勝つためには部門ごとに仕事の方法を改善し、品質の向上、コスト削減を実現せねばならない。それが出来なければ出来た所に喰われるだろう。納期が短縮出来なければ、罰則的値引を要求されよう。すなわち、部門経営の鉄則とは新しい仕事のやり方を追求し、古いやり方を捨て去ることである。そしてトップ・管理者・部下の三者が、この鉄則について共通認識を身につけておくことである。
・やり方を変えなければ結果は変わらない。管理者の役割は、この鉄則をくり返し訴え、部門の一人一人に徹底することである。
・新しい仕事のやり方は常にうまくいかない宿命にある。10の試みがことごとく失敗するという事もある。失敗をくり返すことは誰にとっても苦しい事である。メンバーはもとより、管理者にもトップにも。苦しければ不満が出る。これを続けようと言う者を憎む。人々は方針に対し熱意を失い、やがて手を抜くであろう。こうして新方式の失敗は決定的となる。こうした事態を避けるためにも、鉄則に対するメンバーの認識を徹底すべきなのだ。
【 方針に対する理解を深める 】
・新方式を成功させる第二の条件は管理者がトップの方針、新方式の意義をよく理解、納得できていることである。仮に管理者の理解が中途半端であれば、部下を説得するのは難しい。それどころか新方式に対し、自らのやる気がわいてこないであろう。そしてこういうケースが非常に多いのだ。
・ある方針を理解するとはどういう事か。初めにチェックするのは現状である。われわれは今、どのような仕事の進め方をしているのか。それによってどれだけの業績をあげているのか。この方式はいつ、どのようにして作られたのか。まず現方式の現状のデータを揃える。初めは簡単なデータかもしれない。しかし何度も作り直すことだ。そしてしっかりしたデータはやがて語り始めるだろう。不振の箇所はどこか。改善の余地のある工程はどこにあろう。どこにどのような改善をすればよいか。(この項、続く)
第179回 『 考える癖、選択の幅 』 3
- 2005/08/02(火) 15:00:00
1.頭の固さとは脳の硬軟さだけでなく、だしぬけに示されるトップの新方針に警戒しながら反応するマイナス行動であり、誰でも時に行う行為である。
2.トップの新方針に対し管理者は忠実に実行する者と正面から反発する者があり、比率は9:1であろう。ただし忠実派にいる面従腹背型を入れ替えれば、比率は拮抗する。
3.この腹背型を除く5割の忠実型の管理者にも3つのタイプがあり、第1は新方針に共鳴しても実行の困難さ、リーダーシップの欠如、部下に習得させる難しさで、方針を立ち消えにしてしまうタイプである。
4.第2のタイプは部下の反対が強いと知ると、いつの間にか寝返っているタイプである。
5.管理者、トップ、部下の三者の意見が違う場合、管理者が三者のいずれかの意見を選択している。そして通常、彼がよく選んでいる者が部門の支配者である。
【 忠実型の3つのタイプ 】
・前号で私は上のような記述を行った。忠実型とされる5割の管理者には更に分析を加え、トップの方針の立ち消え型、考えを変える寝返り型とあった。
・さて、3つ目のタイプである。彼は、部下との軋轢や確執を重ねながらも、最後までトップの方針を貫こうとする管理者である。これは、トップの方針に共鳴し納得しているからであろう。または、信念と勇気を持って部下を指導しているからである。だが、このタイプの管理者は極めて少数と言わざるを得ない。 …例えば1割。
【 支配者は部下 】
・会社という組織の中で、管理者は、いや彼が預る部門は一体誰に支配されているのだろうか。部門に関係する人はトップと管理者と部下である。この中で、部門を最も支配しているのは誰なのだろう。
・通常、部門の支配者は管理者である。ただしここには制約があり、トップの示す方針に則ること、目標を設定し、トップの承認を得ること、必要な時はトップの命令を受けることなどがある。両者の関係からみて、支配するという点では支配者はトップであろう。
・上記の3タイプを見てくると、トップの方針が部門の経営に生かされている部門がいかに少ないかが分かる。管理者が自らの意見を優先する自立派も1割と少ない。つまり、部門の支配者は意外なことに部下なのだ。理由は三者の意見が分かれると、管理者が部下の意見を選択することが多い為である。
【 強い風もいつか吹きやむ 】
・トップの方針を無視することは部下との軋轢以上に危険は大きい。事実、管理者が指示を無視していると知ると、トップは荒い言葉で厳しく叱責するに違いない。この間、多くの管理者は叱責にじっと耐えている。亀のように首をすくめて…。
・しかし強い風もいつか吹きやむ。風が一旦吹きやめば次に吹くまで、5日か10日はかかるだろう。トップはふつう10人前後の部門長を管理している。一人の部門長は5人、10人の部下を管理している。そして部門長はそれぞれが問題をかかえており、トップはこれらをチェックしなければならない。つまり、厳しさは部下との軋轢の方がトップとのそれよりはるかに大きいのだ。管理者は以上の事を体験的に知っているのだ。
・次にトップがやって来る時、運が良ければ問題を忘れているかもしれない。トップが根気を失って、問題の先送りを決めていることもあろう。
・なおトップが他部門を兼任せず、一つの部門の専任という事がある。この場合はトップが職場に常駐していれば、また業務を指揮していれば、部課長ではなくこのトップが部門長ということになる。
・以上が問題が解決されない理由である。問題は次々に生まれてくるというのに、改善の歩みはあまりに遅い。一つ一つの部門が良くならなければ、会社は良くなる事はない。こうして多くの企業が業績不振に苦しんでいる。(この項、続く)
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