第173回 『 指導者への道 』 9

  • 2005/05/10(火) 15:00:00

【 更に、トップの提案が実行されない理由 】
・デフレに沈む日本企業では、業績の不振に見舞われている部門の数が非常に多い。時代が厳しさを増しているので、管理者が指導する作業の方法に誤りや非効率があれば、ダイレクトに業績に響くのだ。しかしやり方を正しいものに変えるなら、部門の業績は上を向くのも事実だ。そこでトップはリーダーに様々な提案をするのだが、これがなかなか実行してくれない。
・では何故リーダー達はトップの提案を実行しないのだろうか。イ.長年のやり方をやめるのは辛い。ロ.新しいやり方に変えることは更に辛い。ハ.失敗して責任を追及されたくない。ニ.新方法に確信が持てず、中途半端に取組んで失敗する。前号では以上の理由を挙げた。この他にもいくつか理由が考えられる。

【 原因は責任感の欠如にある 】
・管理者がトップの指示に従わないのは責任感の欠如にある。管理者の第一の責任は担当部門の業績の維持向上にある。もし業績不振に追いこまれたら、彼はいかなる環境にあっても不振から脱却しなくてはならない。それには業績不振の原因を突き止め、業績をあげる方策を立てることである。このためには常に考え抜くことだ。作業の進め方にどんな誤りや非効率があるかを。そしていったん方策を得たなら、部門の総力を上げて改善に取り組むことである。管理者がこのように強い責任感を持つなら、トップの提案は全く違った受け止め方ができるであろう。

・トップの提案が実行されない最も大きな原因は、もしかしたら部下にあるかもしれない。トップの提案を受け入れると、リーダーは部下にこれまでのやり方を止めさせ、新しい方式を実行させねばならない。ところがここには部下たちの強い抵抗が予測される。部下と波風を立てずにやって行きたいと誰もが望む。管理者は職場で孤立すると分かっているので、部下の抵抗を前にすでに勇気が萎えている。これが提案を実行に移さない管理者の心理的要因だ。
・しかし考えても見よ。じり貧部門のメンバーは志気が低下し、職場の雰囲気はとげとげしい。これに比べ改善に取り組む部門はこれにより活気が生まれ、もし改善が成れば人間関係は一段と良化するだろう。

【 不振部門が増えれば会社は傾く 】
・トップは自分の方針に従わないリーダー達を放置して、会社を危うくする。では、リーダーの場合はどうか。彼らは自分が会社に与える影響は小さい、会社の存続に自分の存在は関係は薄いと考えている。しかし会社は部門の集合であり、業績不振の部門が増えれば、これによって会社は傾かざるをえない。反対に好業績の部門が増えるなら会社は必ず活性化してくる。

・部下の抵抗を恐れて、勇気を萎えさせている者は管理者としては論外である。彼はもともと管理者としては失格なのだ。その彼を管理者として登用した者は誰かというと、他ならぬトップである。その意味でこれはトップの責任でもある。
・しかしトップの責任を追及しても問題は解決しないかもしれない。なぜなら、問題は管理者を登用するトップの人選の誤りにあるのではない。長い繁栄により日本の企業は、大企業も中小企業も年功序列が浸透していて、リーダーシップが育つ土壌が失われてしまったのだ。見渡してどこにも人材が極めて少ない。
・それでもバブル崩壊以降の長い不況は、リーダー養成に恰好の環境をつくってくれた。平成に入って人手は余り、リストラにより多くの人の高給は失われつつある。年収200万、300万の働き手が増える時代に、1000万やそれ以上の高給を望むなら、管理職のような職務と、それにふさわしい働きを示さねばならない。(この項、続く)

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