第174回 『 指導者への道 』 10
- 2005/05/24(火) 15:00:00
【 深刻な確執 】
・先日、読者の方からメールを頂戴した。メールには業績不振の改善策をめぐり、トップとの対立に悩む生々しい管理者の姿があった。概略を記すと… 「トップの意見と自分の意見にくい違いがあり、トップの方針が良い結果に結びつかないことがある。トップの意見が正しいとは思えず、自分が正しい場合もある。トップの意見に従うようにしているが、それで良いのだろうか… 」 どこにもある、しかし深刻なトップと管理者の確執。
【 トップと管理者の意見の対立は常に起こる 】
・部門経営をめぐり、トップと管理者の意見の対立は常に起こる。このような時どちらの意見を採用すべきか。まず、部門の運営には管理者が責任を負っている。従って責任を負う者が正しいと信じる考えで運営するのが正しいだろう。すなわち管理者の意見を優先すべきだ。
・ただし、部門はすでに業績不振に陥っている。いわば部門は正常な状況にはなく、このためトップが指導に入っている。従って管理者の意見を優先すべきという原則論は当てはまらない。するとトップの意見を優先するべきであろうか。
・私は両者の意見が食い違ったら、常識的だが優れた方の意見を採用すべきだと思う。しかし困ったことに、意見の優劣を見分ける方法がはっきりしない。いや、無いのだ。トップと管理者の意見が分かれるケースは常に起こるが、これに結着をつけるノーハウをビジネスマンは持っていない。やむなく各社、適当に調整しているが、それが部門の志気を著しくそいでいる。
【 社員の発想では成功しない 】
・両者の意見が対立した場合、どちらの意見が正しいのだろう。このように設問を変えてくれれば考えやすい。私はトップと管理者は、7対3または8対2でトップの意見が正しいことが多いと思う。トップは、経営者の立場に立って物事を考え、発言する。管理者は例外なく社員から登用されてくるので、トップのそれに比べれば発想の視点は低くなる。経営者的発想に近い者、社員的発想に近い者、その中間にいる者…。濃淡の差はそれぞれだが社員意識を引きずっている者が多い。そしてこの分、発想は徹底を欠いてしまうのだ。言うまでも無いが、部門経営は社員の発想では成功しない。
・第二に経験、視野に差がある。トップは会社のいろいろな部門で発生する問題の解決を仕事としている。この経験によって得られるノーハウは貴重である。のみならずトップは自然に大局的な視野を持つ。これに比べ現場の管理者は自部門に経験と視野が限定される。
・第三に真剣さにおいて差がある。会社が潰れれば、トップは全財産を失うシステムになっている。簡単に会社を潰すわけには行かないから、彼は日常あらゆる手段を使って会社を守ろうとする。このような姿勢がトップの仕事に対する真剣さを高め、物事の取り組みが徹底する。
【 では、対立する意見のどちらに従うべきか? 】
・以上が8:2または7:3でトップの意見が優れている事が多い理由だ。この比率は多くの人の経験則とも一致するであろう。従って現場では、トップの意見が優先される場合が多いようだ。
・では両者の意見が分かれた場合、トップの意見を優先するのが正しいだろうか。いや、そうともいえない。なぜなら上の比率は例えば1年とか3年という期間を通して見るときの統計的な数値である。しかも主観に基づく経験則だ。統計では7:3でも、発生したばかりの問題の優劣は五分五分と考えるべきであろう。よって常にトップの意見に従う事は科学的、合理的とは言えない。
・トップと管理者の意見が異なる場合、どうするか。結論を言えばどちらの対策が優れているかを検証し、その優劣を証明するしかない。優劣を見分ける方法が無ければ、作り出すしかない。(この項、続く)
第173回 『 指導者への道 』 9
- 2005/05/10(火) 15:00:00
【 更に、トップの提案が実行されない理由 】
・デフレに沈む日本企業では、業績の不振に見舞われている部門の数が非常に多い。時代が厳しさを増しているので、管理者が指導する作業の方法に誤りや非効率があれば、ダイレクトに業績に響くのだ。しかしやり方を正しいものに変えるなら、部門の業績は上を向くのも事実だ。そこでトップはリーダーに様々な提案をするのだが、これがなかなか実行してくれない。
・では何故リーダー達はトップの提案を実行しないのだろうか。イ.長年のやり方をやめるのは辛い。ロ.新しいやり方に変えることは更に辛い。ハ.失敗して責任を追及されたくない。ニ.新方法に確信が持てず、中途半端に取組んで失敗する。前号では以上の理由を挙げた。この他にもいくつか理由が考えられる。
【 原因は責任感の欠如にある 】
・管理者がトップの指示に従わないのは責任感の欠如にある。管理者の第一の責任は担当部門の業績の維持向上にある。もし業績不振に追いこまれたら、彼はいかなる環境にあっても不振から脱却しなくてはならない。それには業績不振の原因を突き止め、業績をあげる方策を立てることである。このためには常に考え抜くことだ。作業の進め方にどんな誤りや非効率があるかを。そしていったん方策を得たなら、部門の総力を上げて改善に取り組むことである。管理者がこのように強い責任感を持つなら、トップの提案は全く違った受け止め方ができるであろう。
・トップの提案が実行されない最も大きな原因は、もしかしたら部下にあるかもしれない。トップの提案を受け入れると、リーダーは部下にこれまでのやり方を止めさせ、新しい方式を実行させねばならない。ところがここには部下たちの強い抵抗が予測される。部下と波風を立てずにやって行きたいと誰もが望む。管理者は職場で孤立すると分かっているので、部下の抵抗を前にすでに勇気が萎えている。これが提案を実行に移さない管理者の心理的要因だ。
・しかし考えても見よ。じり貧部門のメンバーは志気が低下し、職場の雰囲気はとげとげしい。これに比べ改善に取り組む部門はこれにより活気が生まれ、もし改善が成れば人間関係は一段と良化するだろう。
【 不振部門が増えれば会社は傾く 】
・トップは自分の方針に従わないリーダー達を放置して、会社を危うくする。では、リーダーの場合はどうか。彼らは自分が会社に与える影響は小さい、会社の存続に自分の存在は関係は薄いと考えている。しかし会社は部門の集合であり、業績不振の部門が増えれば、これによって会社は傾かざるをえない。反対に好業績の部門が増えるなら会社は必ず活性化してくる。
・部下の抵抗を恐れて、勇気を萎えさせている者は管理者としては論外である。彼はもともと管理者としては失格なのだ。その彼を管理者として登用した者は誰かというと、他ならぬトップである。その意味でこれはトップの責任でもある。
・しかしトップの責任を追及しても問題は解決しないかもしれない。なぜなら、問題は管理者を登用するトップの人選の誤りにあるのではない。長い繁栄により日本の企業は、大企業も中小企業も年功序列が浸透していて、リーダーシップが育つ土壌が失われてしまったのだ。見渡してどこにも人材が極めて少ない。
・それでもバブル崩壊以降の長い不況は、リーダー養成に恰好の環境をつくってくれた。平成に入って人手は余り、リストラにより多くの人の高給は失われつつある。年収200万、300万の働き手が増える時代に、1000万やそれ以上の高給を望むなら、管理職のような職務と、それにふさわしい働きを示さねばならない。(この項、続く)
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