第168回 『 指導者への道 』 4

  • 2005/02/22(火) 16:20:00

【 我の強さと気の弱さ 】
・ここにある仕事に優れている人がいるとする。では、仮にこの人が管理者になるとしたら、そのまま管理者として通用するだろうか。答えは極めて明快である。単独の仕事では優秀であっても、いざ管理者としての仕事をすると水準以下の実績しか示し得ない人が多い。一匹狼的トップセールスマン、職人気質の強い技術者などが当てはまる。あるいは人に命令したり、注意する事が苦手という人がいる。いるだけでなくこういう人が実に多い。
・この人たちは仕事ができるため管理者に選ばれてくる。彼らは持ち前の我の強さや、逆に気の弱さのため、部下の指導を誤ったり部下を放置してしまう。これに気付いてトップはそれぞれに指示を与えるが、我の強い者はこれに反発し、気の弱い者は部下を恐れてトップを無視する。この結果、生産性は低くとどまり、新人は育成されず退社が相次ぎ、せっかくの部門が沈滞する。

【 異種の能力を必要とする 】
・単独の仕事では人並みの業績であっても、管理者として一定の業績を上げている人もいる。この人たちも管理者としては凡庸かもしれない。ただし、偏見が少なく柔軟さを持ち、部下の言い分とトップの判断の優劣を判断できる。また、トップの方針を部下に行わせる程度の勇気は持っている。そしてリーダーシップという奥深い技術を少しずつ学び取る能力を持っている。この点が社員としては有能なのに自分のあり方を変えずに失敗する先の三タイプの人たちとは違うのだ。すなわち管理者としての能力は、担当者のそれとは全く異種の能力を必要としている。管理者になったらこのことに気づいて、いち早くこの能力を学び取るべきなのだ。
・では、単独の仕事で有能であることは果たして意味がないのか。言うまでも無く、管理者が個人として実力を持っていることは重要である。これにより彼は部下の低い業績に気がつく…。気がついただけでなく我慢できない。この結果自分の水準まで部下の能力を引き上げたいと思い、それを実現する可能性がある。あるいはハイレベルのモデルを自ら示すことができる。

【 伝統的な弟子育成法 】
・一匹狼のトップセールス氏は彼のセールス技法が誰にも習得でき、効果をあげる普遍性を持っていればよい。しかしこういう幸運はあまり期待できないだろう。すると彼は自分の個性的セールスを部下に強要するが、これにより部下とゴタゴタを起こしたり、やがて無理と悟って部下の指導を投げ出してしまう。
・職人気質の技術者は自分が育てられたやり方で新人に接する。仕事は見て覚えよ。技術は教えられるものではない。盗むものである。それは1000年、いやそれ以上の日本の物造りの伝統的な弟子育成法である。今もこんなやり方を続ける人はすくないが、この育成法は技術者の遺伝子の中に色濃く残されているらしく、彼らはたいてい新人の指導は不機嫌で素気ない。少なくとも説明上手で教え上手な技術者は少ないし、管理者にはこういうことが大切だという認識はほとんどない。(この項続く)

第167回 『 指導者への道 』 3

  • 2005/02/08(火) 15:30:00

・前々号で 「人の上に立つには実力こそ最も頼れる武器である」 と述べた。では実力とは具体的に何か。実力がある人とは一体どのような人のことを指すのか。実力ある人の条件は数多くあるが、中でも欠かせない共通の項目は4つあると考えている。以下…。

一、仕事が素早いこと
水準以上の仕事を常に素早く仕上げられるのは得難い能力である。例えば100枚の封筒に宛名を書くという仕事は単純な作業だが、彼らは普通の人の2倍は早い。封筒の中に入れる料金値上げのお願いの文書の原稿を書くとなると、それには頭脳が参加せねばならない。仕事が高度になるとその差は4倍に開くだろう。お客様が料金値上げの理由を理解し協力して頂くためには、十分な説得力を文書に持たさねばならないからだ。

二、誤りが少ないこと
仕事にミスはつきものである。ここで言うミスとは伝票の書き損じ等の単純なミスではない。仕事とはその目的にそって最も適切な完成図というものがある。この完成図に到達するためには最も経済的、合理的な方法がある。また仕事には思いもよらない障害にぶつかったり、情況が変化してこれまでの仕事が無駄になることもある。このように仕事の目的に適した完成図を描き得ない過ち、経済的、合理的方法の選択の過ち、障害にぶつかった際の対処の過ち、そして情況の変化に対処できない過ちなどである。普通の人はこのような過ちを多く犯しているが、実力ある人はそれが少ない。そして両者の開きは目のくらむほどの差だ。過ちが少ない理由は、一つの仕事が終わったら自分がどんな過ちを犯したかをチェックしているからだ。一つ一つの仕事が少しずつ彼らの実力を高めてくれる。

三、仕事の勘所をよく心得ていること
将棋の伝説の名人升田幸三氏がこんなことを書いていた。「自分の父は村相撲の横綱を張るほどの力自慢だったが、ある日父親と近くの老人が庭先で薪を割っていた。父は 「エイッ」「エイッ」 と掛け声をかけて薪を割るが、どういうものか老人の半分もはかどらない。老人はというと腰を下ろしてキセルをプカプカやりながら涼しい顔…。二人の違いはどこにあるかというと、父は力まかせに薪を割るのに対して老人は薪の節の部分を叩き割っていたこと、次に老人はある程度の薪を割ると腰を下ろして鉈の刃を砥石で研いでいた」と語っている。薪を割るのにも勘所はあろうが仕事にはもちろん勘所がある。たとえば仕事を早く仕上げるためには、特に優先すべき事項と後回しにして良い事項がある。全精力を注ぎ込むべき部分と手を抜いて良い部分とがある。また時間の使い方にも、能率の上がる時間帯と、そうでない時間帯もある。勘所を知らない人は、後回しにして良いことや放っておいて良いことに一生懸命関わって、いたずらに自分を疲れさせている。

四、できると考え得ること
物事が上手く進まなかったり、状況が変化すると「だめだ、できない」と考える人と「こんなことは何でもない」と考える人がいる。このような態度の相違は多分その人の性格によって生じるのであろうが、この性格もまた実力の内である。どんなに不利な状況になってもなお「大丈夫、やれる、できる」と考えて努力する人、すなわち積極的思考型の人の実力はそれだけで抜群のものがある。

・できないと考える消極的思考の人は、やった事のない仕事が廻って来るとたちまち逃げ腰になる。彼は仕事に取り組まずに先送りし 「どうした」 と聞かれると様々な言い訳を並べる。上司に早くやりなさいと言われなければ決して動かない。こんな人は少ないだろうな、せいぜい10%と皆さんは考えるかもしれない。私はこのメールでは少数の人のことではなく、多数の人の事を書くように心掛けている。したがって10%ではなく60%以上であろう、と私は考えている。(この項続く)

 にほんブログ村 経営ブログへ