第157回 『 平成2年のバブル不況 』 11

  • 2004/09/21(火) 15:00:00

・会社は日々動き、価値を作り出している。ではその価値を生むメカニズムはどのようなものか…。人が集められて小組織ができる。小組織は集められて会社となる。したがって会社の価値創造を知るには組織を知り、組織を知るには人を知ることである。では会社は何によって動き、今のような成果を生み出しているか。それは組織に働く人々が、心で志向する方向に成果を出す。心で志向する、素朴な段階である。これが研究され、ノーハウが確立すると、…目標になる。従って組織は基本的には目標によって動く…。

【 目標を生かす難しさ 】
・目標とは会社経営の要である。売上、利益、品質等に数字を設定し、トップはここに企業の発展または生き残りを賭ける。そして現場は目標を中心に人々のエネルギーが結集すると期待する。が、この期待は大抵かなえられない。目標を設定しその実現に努力した経験のある人は、目標を生かす難しさを知っているに違いない。目標は経営の中心になく、たいてい飾り物と化している。現場で目標は語られず、結果の数字だけが語られる企業が少なくない。偉そうなことは言えない。当社もそういう道を辿っていた。

・目標はなぜその効果をあげないか。まず目標はチームの目標を個人に分担する。この個人への分担がむつかしい。人は様々なタイプがいて、それぞれ個性や人生哲学を持っている。目標の数値の決め方は彼らの人生の生き甲斐そのものである。高い目標への果敢なチャレンジにやる気が出る人もいれば、手堅い数字を設定し慎重に拡大をねらう堅実派がいる。このAとBに、あなたは目標を与えられるだろうか。これにより双方にやる気を出させられるか…。

【 忘れっぽい記憶力と腐りやすい鮮度 】
・目標には不公平の問題がつきまとい、設定そのものがメンバーのやる気を削ぐ。目標設定には担当者の意向を反映するが、これにより不公平感は増幅する。目標の達成度を業績査定の対象にすると事態は深刻になる。従って目標は設定するが査定の対象にしないというイビツな妥協がなされる。不公平という言葉を聞かずに、あなたは公平な目標設定ができるだろうか。

・目標はすぐ死ぬ。目標が組織の中で効力を失うのは忘れっぽいという人間の記憶力と、腐りやすいという目標の鮮度による。営業マンでも管理職でも今月の売上目標を答えられない人がゴロゴロいる。自分の目標を忘れているなど信じられない思いだ。そしてある日、私が会社の目標を忘れていた。私は何年か格闘をして人間が忘れる生き物であり、目標は忘れられやすいものであるという事を受け入れた。そこで、常に目標に関心が向かうような仕掛けはないか、という問題を得た。
・目標は腐りやすい。先月の目標も実績も、人の関心はとっくに去っている。今月の目標だってたちまち腐る。例えば、月末に向けて達成率の低い人からレースを放棄していく。目標を達成した人も、関心は来月に移っている。月末までレースを続ける人はほんの一握りしかいない。

・平成14年末、売上が低下する会社の新年度の目標を作りながら考えた。当社の部門長は数字が20%も狂うことはない。5%か10%だ。その他データは完備した。目標は公平に分配し、誰一人文句はない。関心が向かう仕掛けを得て誰も忘れない。その鮮度は新鮮だ。平成15年度の目標、二桁成長は以上の事を根拠とした。その結果は17.3%売上げ増、利益率は0.6%であった。

第156回 『 平成2年のバブル不況 』 10

  • 2004/09/14(火) 15:00:00

・平成14年、当社の売上は21.2億、前年比5.7%ダウンという相も変らぬ姿を示した。私は1月から始まる新年度の目標設定のため年末、ひとり上記数値に取り組んでいた。なお、利益1210万、利益率は1%を割り込んでわずかに0.57%であった。
・利益率は企業経営の健全性を示すもので、少なくとも売上高の3%は欲しい。0.57%という利益は、赤字の実体をカバーして黒字決算にした化粧と見られかねない。それでも黒字は黒字だから、私は胸を張っているようにしていた。
・利益率がマイナスに転じればどうなるか。独立系の中小企業は、銀行からの融資の確保を常に考えておかねばならない。従って赤字決算にならないよう細心の注意を払うであろう。赤字決算が続けば、不足する資金の金策が出てきそうだ。ここには高利の資金という危険がつきまとう。それだけに、逆に利益率が5%、10%と伸びるなら企業にとってこの上ない強味になる。

【 目標を二桁成長にする 】
・平成14年12月、私は1月から始まる新年度の目標設定を行った。思い切って目標を二桁成長にしてはどうか…。 当社の実績からはありえない数字だが、本気でそんな事を考えていた。会社の内部が変化していて、あながち冗談だけでもなかった。
・年末の役員会の席で、平成15年の売上目標23.5億、前年比10.5%アップ、利益2.5億(9.9%)を提案した。 「二桁成長です」 役員達はこの案に眉をひそめる者、明るい反応を示す者がいた。その後激しい論議を経て、目標は原案通り承認された。悪い数字が続くことに、彼らもアキアキしていたのかもしれない。

【 月末、バラバラ数字が落ちてきた 】
・では−5.7%成長を二桁成長に変える…、そのような社内の変化とは何か。具体例をあげよう。一般に企業の部門長達は、自部門の売上が今月いくらになるか分からない。ある程度の見当はつくが月末の結果の間に誤差が生じる。その誤差が10%、20%にもなると、実戦の役に立たない。企業のトップは部門長に月初に販売計画を提出させるが、計画の大幅な狂いは常態化していて管理は後追となり、手がつけられない。
・かつて我々も同じような状態にあった。部門長達は頼もしい数字を提出して期待させたが、月末になるとバラバラ数字が落ちてきた。我々は希望をもってスタートし、ガッカリしながら一カ月を終えた。数字に振りまわされ、わけが分からない。10%、20%の誤差を許されないものと考えた。誤差を小さくできないか。我々は7年間追求し、売上は誤差5%以内で収まるようになった。売上の誤差は部門長の中に犯人がいるからだ。彼らは楽観的な数値を出し吟味も反省にも欠けていた。が、しっかり追及することで数字のコントロールを管理し、浸透した。

第155回 『 平成2年のバブル不況 』 9

  • 2004/09/07(火) 15:30:00

・トップとして、私はいかに全社の売上を伸ばしていくか。私は戦闘集団を率いて先頭に立ち、叱咤激励するタイプのトップではない。また強力なパワーで社員を引っ張り、トップセールスで大口注文を得て手本をみせる指揮官ではない。参謀長のように正しい戦闘理論を作り、それをリーダーや部下に定着させる方式を用いるタイプである。
・参謀型をとるもう1つの理由は、私には営業に割く時間が無いということもあった。私はトップ兼研究員であり、困ったことに総社員250人中、研究員という特殊作業員は私一人であった。このため私は営業と訓練の現場作業はなるべく避け、研究室にこもった。
・営業部門に立ち入らなくても、外から眺めても気になる事は沢山あった。ただしこれらを正しく管理しようと思ったら、トップといえど片手間でやれる作業ではなかった。

【 返事は私を安心させたが、同時に噴き出した 】
・営業部門で私は様々なデータを集め、たくさんの問題を発見した。採集したデータから営業マンの非効率的な行動が散見された。正しい理論を模索し、修正し、データ主義、目標設定などの新しい理論を完成した。次に理論の定着を目指して部門長の教育を続けた。これが4つの新商品が完成するいきさつである。

・完成した新商品を市場に送り込んだ。当然私は売れることを期待したが、4つの新商品は当社を拡大トレンドに乗せる起爆剤になかなかならなかった。当社営業マンは新商品の売り込みになぜか意気地がなく、売り出しに時間がかかる癖があるのを忘れていた。
・最近、私はふと気になって聞いてみた。「旧商品のセミナーは、最近あまり売れてないのかしら」 旧商品はもう販売を停止しているのかも…。 その返事は私を安心させたが、同時に噴き出してしまった。
「いえ、いつも順調に満席になってますヨ」

【 現時点の最新のノウハウ 】
・平成14年末の役員会の席で売上は好転していないこと、また新4品が売れていないという報告があった。役員はそれぞれ失望を隠せなかった。役員の一人が次のように指摘した。「新4品は完成から約3年、ここには当社のエネルギーと資本を費消しています。ところで新商品の開発は、費用対効果の点で失敗だったのではありませんか?」これに対し私は次のように答えることができた。
「新4品には現時点の最新の経営ノウハウがこめられています。ここ数年のように先の見えない時代において、私はこの理論によって確信を持って会社を経営する事ができました。」
・旧製品だけで、あの厳しい時代を乗り切る事が出来ただろうか。私はバッターボックスで散々三振を食らったが、やがて自信を持って球スジを見極められるようになった。平成14年、売上げは前年比−5.7%、21.2億であった。15年1月の新年度を前に、大地は明るい予感を得ていた…。

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