第121回 『 匿名の葉書 』 4
- 2003/12/23(火) 14:00:00
・一つのプロジェクトを立ち上げ、関係者と協力して進める作業では色々な事が起こってくる。初夏から晩秋にかけて、小さな会社の更に小さな事業、英会話コースの改善では苦労が連続した。初めのトラブルは、私の改善案に外国人講師が反対した事である。私の改善の第一は、日本人の内向性の壁の障害を生徒に認識してもらい、これを直す日本語研修を行うこと。次に外国人による研修中に、声の小さい生徒に日本人スタッフが注意するので、諒解して欲しい。改善の第二は内容の大幅改善である。
【 知る限り、日本で最もすぐれた英語コース 】
・外国人講師がなぜ反対したか…。 英会話コースは自分達が責任をもって行っている。研修効果に生徒は満足していること。彼らは講師の熱意に最大の感謝を寄せている。自分達の知る限り日本で最もすぐれた英語コースを、(これは英語スクールに詳しい外国人講師たちの言葉で、私のではない)なぜ変える必要があるのか。自分達たちの意向を無視して何かがスケジュールに侵入するなら、とても協力できない…。
・改善の企画をし、執筆者であり会社のトップのTakarabe氏とは一度も会った事も無い。だから信用していない。彼が英語が話せないことは知っていたであろう(知らなかったかもしれない)。 しかし今のコースが20年前Takarabe氏が中心になって作られ、改善されてきたことは知らないかもしれない…。
・外国人講師が反対と分かると、日本人スタッフ達がビビッた。彼らは会社のトップより、現場の外国人講師のほうが怖かったに違いない。スタッフはトップの指示に逡巡し、私の改善はスタートしてたちまち頓挫してしまった。何ということだろう。
【 合宿の一日目から80キロのトップスピードに入る夢の研修 】
・私は執筆を続けたが困難は続いた。若手スタッフによる準備原稿ができていたが、その内容はほとんど役に立たない…。 結局原稿は私一人で書き直しとなった。夏の頃である。
・第一のテーマは 『4時間以内に』 日本人の内向性を除去する研修システムを作ろうというものである。これができれば生徒は10キロのノロノロ運転でなく、合宿の一日目から80キロのトップスピードに入るという 『夢の研修』だった…。 第二のテーマは、日本人が積極的に外国人に話しかける仕掛けとストーリィ作り…。 日本人同士の意味の薄い会話を、これからは外国人と英語でやるぞというのが学習の目的ではないはずだ。本物の対話を外国人と積極的に展開したい。それを可能にする野心的研修、逆質問研修が具体化しつつあった。研究開発に、私は集中していた。
【 外国人講師とはアメリカ流の解決をした 】
・作業は秋も続き、仕上がった作品が増えていき、次々に英語に翻訳された。外国人講師の問題について、私はアメリカ流の解決をした。協力費という名目で給与をあげたのだ。双方すっきりしたが、コースの採算性では今も少し苦しんでいる…。
・いよいよ外国人講師により、当社の社員を使ってテスト研修が始まった。日本人講師による日本語教育も…。 なすべき作業が山積した。これに対し、関係部門長の反応は鈍かった。想像力が乏しく新しいプロジェクトで何をどのように行っていいか分からない。外国人は彼らも苦手で仕事を逃げる部門長がいた。仕事は遅々として進まない。気がついて、執筆者の私が細かい指示を出した。長くやっているとマネージメントという仕事もルーチン化し、何もしなくても部門は動いてくれる。ほぼ一年間、部下に何らの指示をしていない部門長がいた。新プロジェクトは部門長の様々な姿を暴露した。(この項、続く)
第120回 『 匿名の葉書 』 3
- 2003/12/16(火) 15:00:00
・一新した英会話コースについての宣伝が始まった。デモセミとは各社の教育担当者に、英会話の実際を見て頂くデモンストレーション・セミナーである。その担当者が元本部の係長、彼は外国人と自分の航空券をインターネットで申し込み、この時日付を一日間違え、航空会社から送られたメールの確認を忘れた。そして当日、二人は羽田の航空会社のカウンターで途方にくれ、セミナーは中止となった。匿名の葉書氏は、 イ.元本部係長はなぜ処分されないか。
ロ.我々が同じ失敗をしたら断罪される。 ハ.本部(のトップ)は身内のミスを隠す。
・この葉書には三つの問題があった。私は管理者養成学校の創設者である。学校では社内の規律を保つためミスや失策は原因を明らかにし、処罰を含む適切な処置をするよう指導している。また、リーダーは自らに厳しくあれとも教えている。匿名氏はまぎれもなく当社の社員であり、私の言動を良く知る立場にある。第一の問題は彼は我々が同じ失敗をしたら断罪される、と書いた。学者や先生は自分ができないことを人にやれと言う。またはできるのに自分はやっていないことがある。こういう学者が多い中、学校で指導していることは会社で実行していると匿名氏は証明してくれた。少なくとも私たちは紺屋の白袴、口先だけの人間ではない…。
・第二の問題は、我々が同じ失敗をしたら断罪される…、断罪という言葉にある。これは私の規律保持が厳しく、処罰は重く数が多いと暗に批判している。私は学校で、失策は原因を明らかにし、処罰を含む適切な処置をするよう指導している。匿名氏は私の処置を過酷としているが、私は適切な処置と思っている。しかし、二人が主観をぶつけ合っても仕方がないのでデータを取ってみることにした。(後述)
・第三に身内のミスを隠すとした。 この批判は私には心外であり、戸惑った。社員が私をこのように見ているのか…。匿名氏は抗議が軽く扱われないよう、パンチを送ったのだろう。しかし一人でも誤解があるなら解いておきたいと思い、私は返信を書いた。ただし匿名氏には届かないので、手紙はデータと共に全社員に公開した…。
・社内の規律を保つため、過誤や失策等に対し、各社それぞれに様々な対処があると思う。一般に創業者が現役のトップであれば対処は厳しくなり、そうでなければ対処は緩む。私は創業者の現役トップなので比較的厳しいと思うが、適切な処置の範囲にあると思う。私の会社の処罰の実際はどのようなものか、当校への派遣責任者やメルマガの皆さんは興味をお持ちかもしれない。そこで社員への手紙をここに公開します。
1.匿名の葉書本文… (略)
--------------------------------------------------------------
2.処分通知書 処151001
職務上の怠慢
元本部係長 ・処分 減給処分 0.3万円×2ヶ月
・理由 1.時刻という重要事項の確認を怠ったため、
開催時刻に間に合わず、英会話デモセミ
開催が中止となった。
2.お客様からの信頼を失う行動であった。
3.職務上の怠慢により、会社に損害を与えた。
平成15年10月1日 (株)社員教育研究所 代表取締役 元橋康雄
--------------------------------------------------------------
3.H15年 減給処分 1月〜10月30日
本部 25件 7.8万円
第二企推 4 1.6〃
第三企推 3 1.3〃
セミナー 3 1.4〃
教材部 1 0.2〃
仙台 3 7.0〃
大阪 4 1.1〃
――――――――――――――――――――――――――
合計 43件 20.4万円 総務課
4.匿名氏を含めて、社員の方々は是非本部に来て仕事をして下
さい。配置転換のご希望がありましたら、歓迎を致します。
全社の皆さん H15年11月26日 財部一朗
・上記1〜4文書を社員に公開した。この種の処罰は当然、文書で本人に伝えられ、この文書は各部の部門長に必ず送られる。部門長はこれを部下に伝える事になる。元本部係長への処分通知書は、一応全社員が知っているはずであった。この文書を社員に公開した後、総務担当より電話があり、10月1日の処分通知書を部門長へ通知する事を、自分が忘れていた旨の報告があった。
・私はただちにこの旨を部門長に連絡した。ところが部門長の一人から本部処分の25件のうち、送られている物は7、8件しかないという疑問があった。調べてみると他の部門にも7、8件しか送られていない。すると残り18件は何なのか…。私は総務課に説明を求めた。原因は簡単なことだった。本部の通常の処罰は7回であった。この他に私の特別の指導があり不注意に原因のある失策が度重なった。これに対する処罰が18回だった。この18回の特別のケースの処罰では、文書は送付しないきまりだった。
・本部といってもその数わずかに7名前後、これに対し25件の処罰。営業は130人いるから処罰は本部が異常に多い。10ヵ月で本部の処罰は一人3.5回、これに対し営業部は0.14回。 …本部は身内のミスに厳しい。また、当社の規律管理は緩んでいる。
第119回 『 匿名の葉書 』 2
- 2003/12/09(火) 15:50:00
・人が英会話を勉強するには週一、二回、時間は一回1〜2時間の『スクール通学』 が一般である。 ところが日本人はその民族的特性が、外国語の習得に向いていない。 この為スクール通学で人々は惨敗している。 その民族的特性である。まず人々は外国人講師にアガり、自分の名を名乗るという易しい表現をトチる。この事にあわてふためき、必要以上に恥じ、失敗に対し臆病になる…。 これではもう研修にならない。
・この通学制の英会話研修では、日本人の内向性は打ち勝ち難い壁であった。週一、二度の僅かな接触では、生徒は自由に振舞うことなく、小声でコワゴワ英語を話す。 20キロのノロノロ運転では、一生かけても何ほどの進歩もない。 もちろん、すべての日本人が内向的という事ではないが…。 私は通学制では英会話研修は不可能と判断し、『合宿英会話』 を企画した。21年前…。
【 内向性の殻を打ち破る 】
・合宿では生徒たちは、朝から晩まで外国人講師と接触する事になる。単純な発想であった。しかしこの環境は駅前留学の通学制はおろか、グループで群れる本物の外国留学より、はるかに効果的システムであった。
・ここには地獄の訓練から得たスピードアップのノーハウを活用した。この結果、内容が充実した。次に教材の徹底研究があった。その結果開発された『質問訓練』は日本人の内向性の殻を打ち破り、生徒を活性化する切り札となった。
・たとえば7日間の訓練日のうち、始めの2、3日は合宿英会話でもエンジンはようやく30%の始動でしかない。日がたつにつれ、講師の迫力にうながされスピードが50キロにあがる。 ようやく訓練が盛りあがる、 …ヤレヤレ。前号でご紹介した質問訓練により、すなわち講師と生徒が機関銃の相互乱射のようにすごいスピードでやり取りする…。この技術があがるとやがて80キロを越えてくる。中には時速100キロのフルトップになる人もいる。が、それはようやく6日目、7日目の最終日になってであった。
【 学習が成立するエンジンの始動 】
・スピードが50キロを越えると生徒は臆せず話し、学習効果はそれまでより倍化した。 80キロを越えると生徒は自信を持ち、効果は3倍となる。 学習の成立には少なくとも50キロのスピードが必要である。当校の合宿英会話において、30%のエンジン始動の初期の3日間は、学習が成立していない。ついでに言えばスクール通学制では、一年通ってもエンジン始動は30%止まりであろう。 以上私たちは、合宿英会話21年間の総括をした。 それは一つのシステムの開発ではあったが、少なくとも成功とは言い難い…。理由は日本人の内向性を完全に制していないためのようだった。
・日本人のこの内向性は地獄の訓練でも壁であったが、企業派遣の訓練生に対し、我々は遠慮会釈なく積極性を強制できた。それは訓練生を派遣する企業の要望でもあった。ところが自費参加の個人客の英会話生には、流石に私たちも無作法に 『強制』 などできない。これをすればトラブルが続発するであろう。この事が学習効果を妨げた。人々は内向の部屋に閉じこもり、なかなか外に出てくれない…。
【 初日からフルトップに持ちこめよ 】
・合宿英会話の欠点は生徒が訓練の初日からトップスピードに入れない事にある。これがもし克服できたら訓練効果は比類のないものになる。それが実現できないだろうか。 …と考えた。 これはそのまま私の第二の任務となった。日本人の内向性が研修の壁なら、その壁を取り除くのがプロの仕事であろう。これを取り除けば訓練生たちは初日から80キロのフルトップに持ちこめる。そうすれば訓練効果は2倍だ。こうして私たちは英会話研修のスタート時の、日本人の内向性を取り除く方式を研究し、開発した…。初夏から初冬にかけての作業であった。(この項、続く)
第118回 『 匿名の葉書 』 1
- 2003/12/02(火) 15:00:00
社員から自宅に葉書を頂いた。創業以来36年間で、これが2通目の匿名の葉書であった。忘れているのがあるかもしれないが、2通とは少ないように思う。匿名氏の著作権はたぶん保護されていないであろう。文面の一部は次のものである。ご不満があれば抗議して下さい。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
地方の英会話のデモセミ開始に間に合わず、デモセミ中止させた元本
部の係長に対し、何故処分されないか、我々が同じ失敗したら断罪さ
れる。9Fは身内のミスを隠す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記文面の中で9階とはJR新宿駅南口駅前の賃貸ビルに当社の本社があり、8階は営業部門、9階が本部である。 『9階』 とは本部を指すちょっとした隠語らしい。
・英会話のデモセミとは当社の研修に英会話コースがあり、その特長は研修の全てが合宿形式で行われる事である。長期のコースは13日間、短期のコースは5日間。その中間に7日間コースがある。合宿英会話は昭和57年に始まり21年の歴史を持っている。管理者養成学校の独特の研修システムにより、明らかに効果をあげていた。
【 機関銃の相互乱射のように 】
・ただし、私はこの合宿英会話に不満があった。不満は主として二つあり一つは研修内容にある。このコースの売りの一つに質問訓練クエスチョン・トレーニングがあり、外国人講師の質問に肯定的に、または否定的に答える。この会話のやり取りが次第にダイナミックになっていき、最後は講師、訓練生が機関銃の相互乱射のように、すごいスピードでやり取りする…。訓練では初級者にもこのスピードを経験して頂いている。
・私の不満は訓練生の英語が、すべて 『受け身』 で答える事にあった。訓練生が 『積極的に』 質問をし、外国人講師が応答する逆質問訓練ができないか。生徒が英語でどんどん質問をし、外国人に答えてもらう。しかもその内容は高度で真剣で厚みのある会話でなくてはならない。…それを考えた。そんな研修が出来たら、英会話生には何よりの経験になろう。
【 言葉を戦わす習慣を失った 】
・これは明らかに無いものねだりであった。何故なら訓練生にそのような質問を期待できないからだ。日本語は他人と仲良くするにも喧嘩するにも何にでも使える性能の良い言語だが、人々は和を大切にするあまり、言葉を戦わす習慣を失った。この結果、会話とはどのようであるべきかを知り、その技術を持つ人が次第に少なくなった。人は話したい事があって日本語があり、英語がある。ところが気がついたら、人々は話したい事が、…少ないのだ。この事は重要な事かもしれない。…このように考えた。
・一方、英語に上達するには話したい事を持つ事だ。人が日本語において話したい事が少ないとしたら、どういう事を話題とすればいいか。どのように話を組み立て話を進めていけばよいか、不十分ながらそういうモデルを作るしかない。そういうモデルとは外国人を相手に主張する。激しくわたり合う。粘り強く交渉する。日本の食文化を興味深く説明する。そういう逆質問の脚本があればいい。そして擬似的な逆質問が、この脚本で指導できるのではないか。…私はそう考えた。なんと、英会話教育の前に日本語教育が必要になる…。
・夏から秋にかけて、私はそういう研修を6本執筆し、コースとして完成させた。10月のある朝、元本部の係長と外国人講師が羽田の航空会社のカウンターで名を名乗ったが、日付を間違え、全機満席。地方都市でのデモンストレーション・セミナーを中止させた…。世の中、ほんとに色々あります。「地獄…」にあきている人もいらっしゃるかと、一時離れます。(この項続く)
- HOME |



